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帝京高校教諭 |
奥村英治
Okumura Eiji
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教職歴26年目。同校に赴任して26年目。教務主任。「生徒との話し合いを大切にした指導をしたい」 |
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帝京高校教諭 |
針谷忠昌
Hariya Tadamasa
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教職歴19年目。同校に赴任して19年目。「生徒の生活指導をするために、まず教師自身が規範でありたい」 |
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帝京高校教諭 |
魚山秀介
Uoyama Syusuke
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教職歴12年目。同校に赴任して10年目。「生徒に求める前に、まず教師が知的好奇心旺盛でいたい」 |
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事例研究
東京都・私立 帝京高校
修学旅行を「研修旅行」化し
「総合学習」を再整理する |
東京都・私立帝京高校は、インターナショナル、文理、文系、理数の4つのコースを擁する、都内有数の大規模校である。そんな同校では、02年にインターナショナルコースが、03年には文理コースが、相次いで従来の修学旅行を「総合学習」にリンクした活動として再編していった。この動きのきっかけとなったのは、魚山秀介先生が感じていた、次のような課題認識だった。
「インターナショナルコースでは、国際的な視野を養うために以前から、アジア地域を対象に海外修学旅行を実施していました。しかし、世界的な史跡を見ても、生徒の多くはただ『ふうん』と感心するばかりで、それ以上の関心を持てていないようでした。本当は旅行先の国の歴史や今後の両国関係について考えてほしかったのですが…」
そこで同校では、インターナショナルコースが先行する形で修学旅行の再編成を行った。以下、具体的に活動再編の流れを見ていきたい。 |
インターナショナルコースは通常授業の時間も使い事前学習を実施 |
インターナショナルコースが、まず初めに取り組んだのは、事前学習の見直しであった。
「従来は、旅行のしおりを配付する程度の時間しか取れておらず、意識啓発の時間が不十分でした。そこで、02年度は、前倒し実施が決まっていた『総合学習』を、旅行先の中国に関する事前学習の時間に充てることにしました」(魚山先生)
生徒たちは自ら設定したテーマに基づき、旅行先についての調べ学習に取り組んだ。もちろん、ただ漠然と調べ学習を実施しても、学習効果は限定される。研究活動の目標として、年度末に研究発表会が設定され、一連の活動を通じて調査・研究・発表能力が身に付くプランが考えられた。また、自主研究に入る前には、旅行先に関する基礎情報を講義形式で生徒に伝える努力も行われた。
「私は地歴科ですので、現在の中国の産業動向などについて、市販教材なども使いながら講義を行いました。中国の歴史・地理の基本的な情報を教えるのはもちろんですが、例えば日中のお茶の飲み方の違いを比較させながら、両国の歴史的・文化的背景の違いを考えさせるような講義も行いました」(魚山先生)
一方、事前学習では、「総合学習」のみならず、通常の授業時間も使った学習が展開された。例えば、漢字の成り立ちに関する講義などは国語科の授業時間が充てられた。
「教科の専門知識を踏まえた講義の方が、生徒にとって有益なのは間違いありません。インターナショナルコース所属の教師が互いに連絡を取り合いながら、適切な事前学習の分担を考えました」(魚山先生) |
活動を通じて進学先を見つけた生徒も |
15時間の事前学習を通じて、生徒たちは「歴史」「食文化」「日中関係」といったテーマを見つけ、調査・研究を深めていった。修学旅行は単発の行事から「事前学習の成果を検証する場」として大きくその意味を変えたのである。それに合わせ、現地でのコース設定も見直された。旅行会社と交渉した上で、生徒の課題研究のテーマに応じた幅広いオプションコースが加えられたのである。
「経費削減のために一般向けのパックツアーを利用しましたが、生徒の希望を聞いた上で盧溝橋や日中戦争関連の博物館などもコースに加えました。実際、『事前学習を通じて調べた知識があったから、本物に触れた時に得るものが多かったのだと思う』といった感想を寄せてくれた生徒もいました」(魚山先生)
こうしたアプローチが奏功し、生徒の研究のレベルは旅行本番を通じて大きく向上した。それまで漠然と「中国の歴史」「日中関係」といったテーマしか挙げられなかった生徒たちが、「毛沢東思想」「日中の歴史教科書比較」など、より具体的な内容で研究を深めるようになったのだ。
「最終発表までに、高校生としてかなり高いレベルまで研究を深めることができたと思います。また、この研究を通じて興味の方向性を見つけ、進学先を明確にできた生徒も少なくなかったようです」(魚山先生) |
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