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Column
神奈川県の教育革命
 小田原高校の改革の背景には、神奈川県全県レベルで進められる大きな教育改革のうねりがある。具体的にどのような施策が行われようとしているのか、神奈川県教育庁の総務室県立高校改革推進担当の竹村昭主幹と、高校教育課教育企画担当の林誠之介主幹にうかがった。
 神奈川県教育庁では、増加を続けていた県内の公立中学の卒業者数が、88年の約12万2千人をピークに減少に転じ、06年には約6万3千人になると予測している。一方、価値観の多様化、国際化・情報化の進展など社会の変化や、県立高校で学ぶ生徒の学習希望・進路希望の多様化が一層進んでいる。これらの県立高校を取り巻く現状と課題に対応するために、99年度に策定された県立高校改革推進計画では、「高校教育には、生徒一人ひとりの個性が生きる教育や豊かな人間性・社会性を育む教育が求められている」との視点を明らかにしている。
 「生徒数の減少への対応という量の面だけでなく、生徒の興味・関心や学習ニーズの多様化にどう対応するかという質の面からも改革を進めています」(竹村主幹)
 00年度から始まる約10年間の計画では、県立高校の再編統合や単独改編により、単位制普通科高校、総合学科高校、総合技術高校、総合産業高校などの新しいタイプの高校を設置すると共に、普通科高校の特色づくりを一層推進することとし、県立高校の多様化が進んでいる。


(1)入学者選抜制度の改善
 特色ある高校づくりの推進に対応して、生徒一人ひとりの特性や長所をより一層生かすことのできる入学者選抜制度にするため、04年度から改善を行う。これまでの制度は「推薦入学」と「複数志願方式による学力検査等に基づく選抜」の二本立てであった。しかし、一回の受検で第一希望校と第二希望校での選考を行う複数志願方式は、「第一希望校に合格した受検生は、第二希望校での合格判定から除外されるので、第二希望校の実質の競争率が分からない。学力検査から合格発表までの日程も長期化する」(林主幹)といった側面がある。そこで、これまでの「推薦入学」を改め、希望する生徒誰もが受検でき、学力検査を行わない「前期選抜」にすると共に、学力検査を行う「後期選抜」を実施し、二度の選抜機会を設けることとした。
 「前期選抜」では、面接・調査書等に基づき選考を行う。「中学校長の推薦が不要になったので、誰もが受検できます。生徒は自己の興味・関心や特性を踏まえつつ、各校の特色に応じて自分に合った高校を選んでほしいと思います」(林主幹)
 合わせて、今回の改善は、特色に応じて各高校に一定の裁量権を与えている。「前期選抜」では、調査書の評点、記載事項及び面接の結果をどのように重視するか、また、作文、自己表現活動などといった検査の実施、さらに「後期選抜」における学力検査の実施教科数についても各高校に任せている。また05年度以降、学力検査と調査書の配分比の設定などが、一定の範囲内で各高校の裁量に委ねられる他、学力検査の内容についても、教育委員会との協議の上、独自問題の作成が可能となる。


(2)学区の撤廃
 このように神奈川県では、高校の個性化が一層進むことになる。また、再編整備計画により学区を設けられている普通科高校数が減少することも背景にあり、自らの進路希望に基づいて、特色に応じた高校を主体的に選択できるよう、05年度入学者の選抜から、現行の学区を撤廃することとなった。
 「高校にとっては生徒一人ひとりの学習ニーズに応えられる魅力ある学校となるよう、特色の定着・深化に向けた学校運営と合わせて、中学生や保護者に対する広報活動の一層の充実が求められています。中学生には、個性や特性を考えながら、情報を収集し、主体的な高校選びをしてほしいと思います」(林主幹)
 
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