ベネッセ教育総合研究所 ベネッセホールディングス
卒業生の組織化を軸に、学校と地域が協力し合い人材ネットワークの構築を目指す
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地域レベルに人材のネットワークを広げる「先輩助っ人バンク」
 「先輩アドバイザー制度」の実績を踏まえ、03年度よりスタートしたのが「先輩助っ人バンク」である。この制度は、同校の卒業生に限らず、広く地域の社会人が加入する組織で、メンバーには弁護士や放送記者など、70名余りが名を連ねる。進路講演会やセミナーを通じ、より大きな視野から生徒の進路意識を啓発するのが設立のねらいだ。03年7月には、そのうち36名を招き、「社会で活躍する先輩たちとの職業別セミナー」が実施された。
 「当初は本当に参加者が集まるのか不安でしたが、同窓会報やホームぺージを通じて同窓生などにお願いした結果、予想以上の参加をいただけました。今後とも呼び掛けを継続し、広く地域の方々の参加を求めたいと思います」(神戸先生)
 そして、先の「先輩アドバイザー制度」と合わせ、この制度は今年度からスタートした「総合的な学習の時間」において、重要な位置を占めている。総合学習委員会委員長の鈴木靖先生によれば、同校の「総合学習」においては1年次を進路意識の啓発期間と位置付け、進路指導部が実施してきた講演会やセミナーとの積極的な連携を図っているという。
 「本校の『総合学習』では、進学先や将来に関する知識を習得することよりは、自らの進路について徹底して深く考えることを重視したいと考えました。その意味で、先輩や社会人の話を聞き、自らの人生を振り返ることは非常に重要な意味を持つのです。従来の取り組みをうまく生かしつつ、体系的な進路指導プランを模索していきたいと思います」


全県レベルでの教育改革を見据えた改革の将来像
 スタートから3年、順調に発展を続ける同校の取り組みは今、新たなステージを迎えている。と言うのも、神奈川県では05年度高校入試より学区撤廃が決定しており、同校はまた、04年度から近隣の小田原城内高校と統合し単位制高校へと移行するからだ。石原校長は、このような教育環境の変化を、一つのチャンスとして捉えているようだ。
 「単位制をうまく機能させ、全県に対して本校の魅力をアピールすることで、教育環境の変化をプラスの変化にしていきたいですね。単位制移行に際しては、今まで以上に進路観の育成をしっかりと行っていく必要がありますから、人材バンクの活用においても、その視点をより明確にしていく必要があるでしょう」
 一方、神戸先生が指摘するのは、地域との連携をより密にしていく必要性だ。
 「これまで本校は、自校の教育に卒業生・地域の力を生かすという発想に基づいて取り組みを行ってきました。しかし、地域に確固とした地位を占めるためには、これまでとは逆に、本校が、地域のために自校の資産を提供していくという発想が重要になると思います。例えば、近隣の学校が講演会などで人材が欲しいとき、『小田原高校なら人材ネットワークを持っているから』という話になれば理想的ですよね」
 実際、そのための準備は着々と進行中だ。統合する小田原城内高校の同窓会にも、『先輩助っ人バンク』への参加を要請している。また、県内の高校や他県の高校との情報ネットワーク構築を目指す「小田原高校ミラクルストーリー」が始動している。卒業生の組織化からスタートした同校の取り組みは、「高校戦国時代」(神戸先生)を見据えた新たな意義と役割を担いつつあるのだ。
 
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