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受験期における情報提供
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2年次の秋には志望大決定の意識付けを
 前号では、2年次の学部・学科選択における保護者への情報提供について考察した。今号ではそれに続く、志望大決定から受験に向けた情報提供について考察していきたい。
 一般的に、多くの公立進学校では、志望大の決定を3年次の夏休み前に行っている。文理選択(1年次)→学部・学科選択(2年次)→志望大選択(3年次)という進路指導ストーリーを踏まえてのことだが、「対保護者」ということを視野に入れるならば、できれば2年次のうちから、具体的な大学名を挙げて志望大を考えるよう、保護者の意識付けを行っておくのが望ましい。
 大学名を挙げることで、子どもと具体的に進路の話がしやすくなる、というメリットももちろんあるが、むしろここで重視しなければならないのは、具体的な大学名が挙がることで、保護者が「受験生の親」としての意識を持てることである。実際、3年次の受験期になって、突然「勉強しろ」と子どもにプレッシャーを掛けてしまう保護者が少なくないが、それは取りも直さず「受験生の親」としての意識が、それまで確立していなかったことの証左である。できるだけ早期に「受験生の親」としての意識付けを行っておくことは、保護者が余裕を持って子どもに接することにもつながる。
 実際に意識付けを図る時期としては、2年次の秋頃が望ましいだろう。この時期に、多くの学校では三者面談を実施するはずなので、これを活用するのである。また、できるならば、進路指導部などが主催して、保護者全体を対象とした進路講演会を実施するのが望ましい。明確な「場」の設定をすることで、学校として伝えたいメッセージがしっかりと伝わるはずだ。


意識付けの際の注意点
 さて、ここで注意しなければならないのは「具体的な志望大を考え始めてください」などと、漠然とした情報提供を行わないことだ。と言うのも、「志望大の検討=合格可能性のある複数の大学を検討すること」という常識は、必ずしも保護者に共有されているとは限らないからである。実際、3年次になっても「○○大学しか受験させたくない」といった発想の保護者に出くわし、苦慮した経験を持つ教師も多いはずだ。
 志望大決定に向けた情報提供においては、それがいわゆる「憧れ大」を挙げることとは異なることを明確に意識させることが重要である。したがって、少なくとも以下の2点に注意することがこの時点では肝要と思われる。



「群」として志望大を捉えさせる
 具体的に合格可能性のある大学を考えることがこの時点のテーマである。だが、2年次~3年次の前半は、生徒の成績の伸びが最も著しい時期でもある。偏差値で10以上も成績を伸ばす生徒が見られることもある。したがって、過度に堅実な目標を設定させることは、以後の成績上昇の可能性を奪ってしまうことにもつながりかねないと言える。
 そこで、3年次の夏の時点までは、
1.現在の学力レベルに応じた大学
2.成績が伸びた際に受験を考える大学
3.成績が下降した際に受験を考える大学

の3つのレベルに応じて、志望大を「群」で考えるように促したい。そうすることで、成績がある程度上下しても、コロコロと志望大が変わり、計画的な対策ができない、といった事態を未然に防ぐことができる。同時に、成績が上がる可能性を視野に入れることで、学力向上に向けたモチベーションを維持することも可能になる。もちろん選択肢として挙げる大学は、レベルの差はあっても、生徒が学びたいことが学べる大学であることが絶対条件である。これまでの進路学習を振り返らせるなどして、きちんと生徒に目標を描かせるようにしたい。
 この点は、万一成績が下がってしまった場合にも重要となる。成績不振から「望まざる進学」を余儀なくされる生徒も見られるが、そんな悲劇の多くは、試験に失敗したときのことを十分考えずに、泥縄式に「受かりそうな大学」を受験していることに起因する。たとえ本来の実力より難易度が低い大学であったとしても、納得して進学できる大学を、家庭でしっかり考えるよう促すことが、二次試験直前に慌てないためにも求められる。



学校としての受験戦略を伝える
 一方、この時点では、学校としてどのような受験戦略を立てているのかを、保護者に伝えることも重要である。多くの学校では、ある程度のレベル差をつけて、複数の大学を受験させる方針だと思うが、この点が必ずしも保護者に共有されているとは限らない。
 受験直前になって「浪人してもいいから難関大を受験させたい」「進学する気がないのに併願大を受験させるのはなぜか」といった保護者の声に当惑しないためにも、ある程度学校としての戦略を説明しておくのが望ましい。過去の卒業生のデータなどを資料として提供するのがよいだろう。
 
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