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受験期における情報提供
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受験直前期の保護者へのケア
 2年次~3年次の夏までに、以上のような意識付けが行われていれば、ある程度の成績の上下にも対応しつつ、志望大受験に向けた対策を行うことが可能になるはずだ。以後の流れは学校により多少の違いがあると思うが、ここでは、公立進学校では一般的と思われる3年の11月、センター試験終了後の1月と、三者面談を2回行うケースを想定して、それぞれのポイントを考えてみたい。



11月の面談のポイント
 11月の面談では第一志望大の決定が重要であるが、合わせて注意したいのが私立大を併願する場合である。こちらについても、少なくとも2~3校はレベル差をつけて、受験大を設定するようにしたい。
 ここで特に重要なのが、「場慣れするために受験する場合もあり得る」という受験戦略上の発想を、きちんと保護者に伝えることである。もちろん、併願大を決定する際にも、「行く気がある」学校を選ぶことが大切であるが、国立大志願者にとっては、たとえ併願大受験に失敗しても、その経験を次回の受験に生かしてくれれば良いわけである。生徒にその意義を伝えると共に、保護者にもきちんと説明するようにしたい。
 また、当然のフォローとして必要になるのが、併願大ごとに、それぞれを受験する意義をきちんと明確にしておくことだろう。真の意味での滑り止めという併願大ももちろんあるだろうが、中には受験経験を積むことを主目的とした併願大や「記念受験」に近い併願大もあるだろう。
 そうした大学でたとえ不合格になったとしても過度に落ち込む必要は全くない。しかし、生徒の性格によっては、失敗に過敏になってしまうこともあるだろう。そうなってしまっては、せっかくの受験経験を生かすことはおぼつかない。
 生徒に併願大受験の意義を意識させることはもちろん大切であるが、保護者についてもそれは同様である。もし、生徒が失敗して落ち込んでいるような場合には、失敗を前向きに捉えるような励ましを与えるよう、保護者と目線合わせをしておきたい。



1月の面談のポイント
 この時点ではセンター試験の結果を踏まえた受験大の最終決定が面談の主軸となる。受験大が決定すれば、あとは当人の努力による部分が大きいので、ここでは、精神的なフォローの在り方や、生徒の健康管理に向けたアドバイスなどを、保護者に意識的に行うようにしたい。
 まず、精神面でのフォローについてであるが、この時期の保護者の多くは、「受験生の親として、何か子どものためにしてあげたい」という気持ちに駆られている。実際、図1は弊社が実施したアンケートの結果であるが、「夜食等、食事面での配慮」あるいは「(勉強法・進路など)本人の意見を尊重し、口出しを控えた」といった配慮を、かなりの保護者が意識的に行っていることが示されている。
図1
 ただし、保護者の気持ちが前面に出すぎて、子どもにプレッシャーを与える言動につながらないよう注意を促しておきたい。図2からも分かる通り、受験生の多くは「普段通りで、特別干渉されなかった」ことに、一番感謝しているのである。具体的な勉強法のアドバイスなどよりは、「言葉や態度で応援してくれた」「体調面に気を配ってくれた」といった、どちらかと言えば「見守る」タイプのフォローを喜ぶ傾向にあるようだ。
図2
 なお、子どもが「してほしくなかったこと」を図3に挙げた。保護者の意識とは必ずしも一致しない部分も多いと思われるので、情報提供時にはこのようなデータを示しながらアドバイスするようにしたい。
図3
 ただでさえ神経過敏な受験期に、保護者の方が特別な配慮をするのは、かえって生徒を刺激することにもつながりかねない。栄養価の高い食事を準備してあげる、温かい言葉を掛けてあげる、夜食に果物を準備しておいてあげるといった、ささやかな心配りこそが、この時期には求められると言えるだろう。


対保護者の情報を明文化する視点も重要
 さて、これで年間を通じた保護者への情報提供の在り方を一通り確認したわけだが、全体を通じて言えるのは、学校で行われる指導のポイントを見極めた上で、適切なタイミングを図りつつ情報提供を行っていくことが重要であるということだ。本コーナーでは主として面談や保護者会を通じた情報提供を想定していたが、以前に紹介した保護者シラバスの作成など、今後は対保護者向けの情報も、より明文化、体系化していく発想が重要になってくるだろう。
 ちなみに、今号のテーマである受験期の情報提供についても、ある学校では、生活パターン・栄養管理面などのアドバイスをまとめた資料を配付している(図4)。年間計画の明文化と合わせ、指導時期に応じたフォローも考え直していく必要があると言えるだろう。
図4
 保護者の教育力を引き出すにはどうすればよいか――。この大きな課題に対する学校の試行錯誤は今後も続いていくだろう。各校とも工夫を凝らし、学校と保護者のより良い関係構築に向けて努力してほしい。
 
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