ベネッセ教育総合研究所 ベネッセホールディングス
キャリア教育の視点と方法を探る
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情報交換により科目間の有機性を保つ
 外部の人材を有効に活用していることも、同プロジェクトの特徴である。「女性の生き方と職業」や「キャリア開発基礎1」「キャリア開発セミナー」などは外部講師が担当するが、外部講師が力を発揮するのは実際の講義の場だけではない。
 「外部講師による半期に一度の情報交換が、授業改善に効果を発揮しています。各講師がどのような目的・内容で授業を展開し、どんな効果が上がったのかという情報交換を行う中で、講義の内容が重なるのであれば、自分の講義では省いて別の展開を考える、効果のある手法は採り入れるといった工夫を各講師がしていくのです」(齋藤学長)
 こうした話し合いの中から、早くも次年度に向けて各科目の学年配当に関する改訂案が浮上している。例えば「女性の生き方と職業」は、3年次の後期以降に始まる就職活動を視野に入れ、できるだけ早い時期にキャリアプランを絞り込ませるため、1年次後期へ繰り上げられる予定だ。現在3年次のみで実施しているインターンシップも、2・3年次の実施となる。早めに実施することで、モチベーションや選択の幅を広げると共に、学生が理想と現実の違いに気付いた場合に、早めに軌道修正できるようにするためだ。


キャリアを見つめることで教養に対する意欲が高まる
 学生のキャリア開発科目群に対する評価は総じて高い。学生による授業評価結果は、授業内容や満足度、身に付いた力など、ほとんどの項目で通常の科目より高い数値を示しているという。また、資格に対する意識も高くなってきており、99年度には242名だった資格講座受講者数、693名だった資格検定試験受験者数が、02年度にはそれぞれ807名、3419名に膨れ上がった(数字は延べ数)。さらに、キャリア開発科目を1年次から受講することで、3・4年次で受ける専門科目に対する意欲も高まるという。
 「専門科目として学ぶ文学や人間関係学、心理学などのリベラルアーツ的な科目は、一見職業に直接結び付かないと思われがちです。しかし、こうした教養が職業的な専門性と合わさったとき、相乗効果を発揮することが往々にしてあります。例えば、ホテルマンがお客の荷物を運びながら、その土地の歴史や文化を紹介する。それだけでホテルの格はぐっと上がると言います。ホテル運営の専門教育を受け、接客のスキルを上達させた上で、教養を身に付けることで、接客マニュアルから学ぶ以上のコミュニケーション能力を発揮できるようになるのです。ホテル運営は一つの例ですが、キャリア開発科目によって、学生は改めて教養の大切さに気付き、3・4年次からの専門科目にも力を入れるようになるのです」(齋藤学長)
 教養教育の伝統を生かしながら「キャリア」という新しい視点を盛り込むことで、学問に対する興味と社会への関心を相乗的に高める――。学びへの姿勢を築く上で、職業観・勤労観の育成が有効であることを教えてくれる事例ではないだろうか。
 
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