ベネッセ教育総合研究所 ベネッセホールディングス
リスニングテスト導入の意図を読み解く
河野浩
文部科学省初等中等教育局国際教育課
国際理解教育専門官
河野浩
Kawano Hiroshi
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●インタビュー
1 リスニングテスト導入の背景
リスニングテスト導入の背景には、行政サイドのどのような意図があるのだろうか。文部科学省初等中等教育局国際教育課の河野浩専門官にお話をうかがった。
80年代から議論されていたリスニングの導入
――去る11月5日、文部科学省の公式発表として、センター試験「英語」におけるリスニングテストの導入が明らかにされました。実施内容の詳細や各大学での配点などが不明なために、高校現場では困惑の声も聞かれる状況です。まず、リスニングテスト導入に至った経緯についてうかがえますか。
河野 急に実施が決まったように思われるかも知れませんが、実は大学入試センター内部では、80年代からリスニングテストの導入に向けた議論が行われてきました。実際、96年にはプレテストを実施するところまで計画は進んでいたのです。しかし、作問上の問題に加え、機材の準備、監督者の給与、そして「英語がリスニングテストを実施するなら他の外国語も行うべきではないか」といった課題をうまくクリアすることができず、なかなか実施に踏み切れない状況が続いていたのです。
――そうした状況を変えたのが、00年に大学審議会が出した「リスニングテストの導入を求める」という答申だったわけですね。
河野 直接的にはそうです。しかし、単に答申の結果というよりは、社会で求められる日本の英語教育の役割そのものが、ここ数年で変化していることの影響が大きいと思います。文部科学省では経済団体などに継続的にヒアリングを行っているのですが、「ビジネスシーンで実際に使える英語力のある人材」に対するニーズが急速に高まっています。事実、外資系企業などでは、社内の共通言語が英語であるところも珍しくなくなっています。そうした時代背景に対応した人材が求められるからこそ、センター試験の見直しが必要だったわけです。
――03年度新課程では「コミュニケーション能力の育成」という視点が強く打ち出されていますが、これもそうした時代背景を反映したものというわけですね。
河野 そうです。そして、「コミュニケーション能力の育成」を掲げた以上は、実際にその目標が達成できたかどうかを測る指標が必要です。大学受験者の多くが受験するセンター試験は、その意味で最適な場ではないかと思います。


リスニングテストは本格的な内容把握問題になる
――では、今のところリスニングテストはどのような内容のものが想定されているのでしょうか。これは高校現場の指導のみならず、大学の個別試験の作問等にも影響する問題だと思われます。
河野 まだ最終的には決まっていないものの、いわゆる「ヒアリング(=聞き取り)」テストとは別物だと理解していただきたいですね。
――ということは、発音やアクセントに関する問題は出ないということでしょうか。
河野 そうですね。あくまでもコミュニケーション能力を測るテストですから、何を「言っているのか」聞き取るだけの内容になっては、リスニングテストを導入した目的は達成できません。むしろ、会話やスキットの文脈から、登場人物が何を「言おうとしているのか」、あるいは、その問いに対して「どうすればよいのか」といったことを考える、いわゆる「読解力」を問う出題になるはずです。
――かなり本格的な内容把握問題が出題されるわけですね。出題数、解答時間などについて、現段階で明らかにできる部分があればお聞かせ願います。
河野 配点、解答時間などは、先の報道発表の時点から変わっていません(図1参照)。ただし、問題については、設定されている時間からみて、2~3分間程度の会話を2回聞かせた上で、内容把握問題を出題する形になるのではないでしょうか。また、問題のスピードについては、現実的に80~100wpm前後(※1)の範囲が妥当ではないかと考えています。1つの問題文に対する設問は2~3問になると思われますが、問いごとに解答させる形式になる予定です。最終的には、04年度に実施予定の試行テストの結果を踏まえての決定になると思います。
※1 wpm(works per minute)…一分間当たりに読む(聞く)英単語の語数を意味し、読む(聞く)スピードを表す単位として用いられる。
図1
 
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