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指導と評価の一体化を図る「絶対評価」の在り方とは
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校内の評価規準統一と無理のない評価方法を模索
 絶対評価を運用する際、留意しなければならない点の一つは、校内の評価規準の統一である。プロセスの客観性には自信を見せる古澤校長も、「評価規準の統一」については慎重な姿勢を崩さない。
 「絶対評価で一番重要なのは、最初に各教師がどのように評価をするのかということです。本校の場合は『観点別個人データ』に記入する際の各教師の判断基準に統一性があるかどうかが大きなポイントになります」
 そのため、同校では校内の評価規準をできるだけ統一するために、次の二点に留意している。一つは評価規準をできるだけ生徒の具体的な行動の姿、レベルで表現し、客観性を持たせること、もう一つは複数の目で見るということだ。教務主任の野原弘康先生は次のように述べる。
 「評価規準は、我々教師が見ることができ、実感できる必要があります。そのためノートにきちんと授業の要点が記されているか、授業中に発言をしているか、単元の理解に必要なキーワードを用いているかなど、どの教師が見ても客観的に判断できるよう規準を策定しました。また、一人ではどうしても評価のばらつきが出やすいですから、例えば技能教科なら2人で生徒の作品を見る、5教科なら定期考査の解答用紙をクラス担任だけではなく出題者にも回し全クラスで評価の統一を図る、など極力平準化した評価になるよう工夫しています」
 もう一つ、絶対評価でしばしば指摘されるのは、評価をすることばかりに気を取られ「評価のための授業」になってしまいがちだという点である。数学科主任の森川勝介先生は指摘する。
 「授業中の評価は『観察』で行いますが、当初は1回の授業で4観点すべてについて評価しようと思っていました。ところが、一人ひとりの状況をじっくり観察しようとするあまりに、教師は評価で手一杯になり、生徒のつまずきに気付いたり、それをフォローするための指導にまで手が回らなくなってしまったんです」
 そこで数学科では、1時間以内にすべての生徒のすべての観点を見ると決めるのではなく、ポイントを絞って評価する方法を採ったという。4観点のうち、同校が数学を学ぶ上で最も大切なスキルとして位置付ける「見方や考え方」(思考・判断)は毎時の授業で評価することとし、その他の観点については、ある授業では「知識・理解」、別の授業では「関心・意欲・態度」と、授業ごとに変えていくのだ。
 「授業の内容に応じて身に付けさせたい力は異なります。授業ごとに観点を変えても、単元末、学期末には4観点すべてについて判断できる材料が揃いますから、結果的に適正な評価ができるのです」(森川先生)


他校との評価規準の格差解消が今後の課題
 もちろん課題もある。最大の課題は、評価規準a「十分満足できる」が他校のそれと違わないかということだ。同校では学校間格差を生まないための方策として、技術・家庭科研究会や数学科研究会など県内の中学校を対象とした教科単位の研究会に積極的に参加し情報交換をしている。また、岐阜市が設置する評価改善委員会で評価規準も含めた指導計画を作成している。こうした目線合わせをしているとは言え、評価規準の作成はあくまで各中学校で行うのが基本であり、必ずしも整合性が取れているとは言えない状況だ。
 実施の過程で生じた様々な問題点を把握し、即座に改善に努める加納中学校。導入後、初めての入試となる04年度入試で、評価方法が妥当であったかどうか、その真価が問われるのである。
 「個を重視した指導を進めるには絶対評価は欠かせませんが、高校入試で信頼感を得るまでには至っていません。我々中学校は評価の精度を上げて、不信感を払拭する努力を続けると共に、高校と目線を合わせて、生徒にとって本当に必要な評価とは何かを、話し合う時が来ていると思います」(古澤校長)
 
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