商品・サービスと出店形態の多様化が新戦略のカギを握る |
閉塞状況を打破するために、コンビニ各社は生き残りを賭けて新たな業態の開発に乗り出した。従来の小売業態の枠を越える多角化戦略にシフトし始めたのである。多角化の特徴は大きく2つ、商品・サービスの多角化と出店形態の多角化だ。
商品・サービスの多角化として挙げられるのは、公共料金の振り込みや各種チケット販売、銀行ATMの設置などで、いずれも90年代後半に現れた。免許制だった酒類販売が自由化されたことで(注※)、酒類の取扱店はさらに増えており、現在は限定的だが医薬品についても、徐々に取扱範囲が広げられつつある。 |
※経営が厳しい酒販店が多い地域は、規制緩和を制限する「緊急調整地域」が設けられている。 |
さらに、近年では郵便事業の規制緩和に伴って郵便ポストを設置するなど、より公共的なサービスも拡充しつつある。店舗数の多さと深夜営業の利便性が、これまで小売業が手掛けてこなかった商品・サービスの拡充を可能にし、コンビニの持つ「生活のインフラ」としての重要性を、より一層高めているのだ。
また、コンビニがマーケティング力を発揮して、メーカーに働き掛けて商品開発を主導する例も見られ始めた。本来、小売店はメーカーが企画・開発した商品を仕入れて販売することを前提としているが、コンビニ側が提示したレシピに応じてインスタント食品や酒類など独自仕様の商品を開発し販売する動きが活発化している。
この背景には「生活のインフラ」として確固たる地位を築いたコンビニが、その発言力を増大させていることがある。規制緩和やコンビニの地位向上により、さらに商品・サービスを拡充する素地が広がりつつあるのだ。
さらに、コンビニのオーバーストア状態は、出店形態の多角化・多様化も誘発している。
これまで出店のメインターゲットだった都市部や幹線道路が飽和状態に達したことで、コンビニ各社は新たな店舗戦略を打ち出さざるを得なくなったからだ。企業の工場や大学構内、駅構内など、これまで食堂や生協が果たしてきた役割をコンビニが代替する例が見られるようになった。経費を削減したい企業、購買の利便性を高め学生を集めたい大学、コンビニのノウハウを取り入れて顧客サービスを充実させたい鉄道など、出店先のニーズを敏感につかみ、いかに効果的な立地を確保できるかは、今やコンビニ産業共通の課題になっているのである。 |