ベネッセ教育総合研究所 ベネッセホールディングス
小売業の枠、国境の垣根を越え飛躍するコンビニ
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企業が求める人材とは
株式会社 セブン・イレブン・ジャパン
問題意識を持つことで環境変化への即応力を養う
 03年8月、コンビニ産業の雄、セブン-イレブン・ジャパンは世界初の単一国内1万店を達成した。
 1万店のうち、同社が直接運営する直営店はわずかに400店余り。残りは独立したオーナーが営むフランチャイズ加盟店だ。したがって、業務の中核を担うのは本部と各店舗を結ぶスーパーバイザーで、大卒の新入社員の実に9割がスーパーバイザー候補として採用される。同社のスーパーバイザーはオペレーション・フィールド・カウンセラー(OFC)と呼ばれ、1人7~8店舗を受け持つ。単なる情報伝達役ではなく、店舗経営のアドバイスを行う「経営コンサルタント」としての意味合いが強い。
 そんなOFCが週に一度、全国から東京の本部に一堂に会する機会がある。新商品の紹介や会長・社長の訓話の他、OFCが各店舗での成功事例を披露する「FC会議」である。現在、OFCは約1380名。交通費だけで年間30億円以上かかるという大掛かりな取り組みだが、採用・勤労部の渡部昭彦氏は「成功事例の普及以上に意味がある」と指摘する。
 「小売業は環境対応産業ですから、消費者のニーズや天気・気温の変化など、目まぐるしく変わる環境の変化を迅速に、的確に捉えて対応していく必要があります。経営陣と現場の社員が頻繁に顔を合わせ、新商品の情報や各店舗の成功事例、経営陣の意思など情報交換を行う中で、環境変化を感じ取り、次のアイディアにつなげていくのが目的です」
 環境変化への対応は、同社の人材要件としても重要なキーワードの一つだ。環境変化を感じ取れるだけの感受性、さらにその中に問題を見いだす「問題感知力」とも言うべき資質がOFCのみならず、小売業に従事する者には欠かせない。ただ漫然と日々の業務をこなしているだけでは、問題意識は生まれない。店舗オーナーとの会話、新聞やテレビなど、担当店舗を回り、日々の生活を送る中で、様々な問題を感じ取れる感受性が大切なのだ。
 「専門性は必ずしも必要ありませんし、大学・学部名も一切不問。重要なのはあくまでも本人の資質です。面接の話題は、ゼミや卒論、アルバイトといった何気ない話題が中心ですが、そうした話題の中から、なぜそれを選んだのか、なぜそのように行動したのかなど、背後にある問題意識を探っていきます」(渡部氏)
 さらにそうした言葉のやり取りを通して、こちらの質問の趣旨を的確に理解しているか、簡潔明瞭に自分の考えを述べられるかといった、コミュニケーション能力も見るという。店舗に伝えたい方針や情報をオーナーに理解してもらう、オーナーの考えを受け止め対応策を練る。ややもすれば意見の食い違うこともある店舗との折衝の中で、様々なビジネスプランを実現していくためには必須の能力なのだ。
 さらに、こうした資質の形成は「高校時代にルーツがあることが多い」と渡部氏は指摘する。
 「自分の意志に基づいて大学や就職先を選んでいる人は、高校時代に遡っても、自分の信念や考え方に基づいて行動してきた人が多いですね。大学でなぜその学問を専攻したのか、なぜそのサークルに入ったのか、といったことを突き詰めると、高校生活の中で抱いた興味や関心に行き当たります。またコミュニケーション能力も、高校時代の集団生活の中で培われていることが多い。例えば、野球部で大会出場を果たした人は、実績があるから、体力があるから魅力的というわけではなく、集団生活の中で目標に向けて努力をした点が魅力なんです。高校時代はいろいろな自我が確立する時期。何をしたいのか、何が好きなのかといった、大学、就職へと続く自分の『ルーツ』を培ってもらえたらいいですね」
 
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