ベネッセ教育総合研究所 ベネッセホールディングス
カウンセリングの手法を用い生徒の自己肯定感を育む
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実践から
「雄高パスカル便」の発行までで、一つの課題は完結する。これを「総合学習」の1コマごとに実施するわけだが、取り組みを推進していくための、教師間の連携には、どのような工夫をしているのだろうか。
 各課題を実施するに当たっては、直接指導を行う教師の共通理解を図るため、まず年度始めに、全教師に取り組みの意図を把握してもらうためのオリエンテーションを実施。その上で、課題の内容や手法を共有するために次のような方法を採っているという。
 「各クラスの担任の先生方には課題の実施前に、私と渡邊先生で作った指導案を毎時間配付します(図2)。初めての先生でも実践できるように、ねらいや方法、タイムテーブルなどを細かく記載していますが、その時々の学年やクラスの実状を考慮して、作り直すことも珍しくありません」(淡路先生)
図2
 課題の内容を策定するときは、生徒の実状把握が不可欠だ。そこで、まず淡路先生と渡邊先生が作った指導案の素案を、各学年に一人ずついるパスカルタイムの担当者に渡す。担当者は各クラス担任から生徒の実状を吸い上げた上で、実施内容が生徒の実状とずれてはいないか、時期・テーマは適切か、各担任の指導の流れに合っているか、実施する教師の負担が大きすぎはしないかなど、指導案の内容を精査していくのだ。


実施3年目を
迎えた03年度、一連の取り組みを通じて生徒気質にも変化が現れているという。
 「現在の高校生に足りないものは、コミュニケーション能力と自己肯定感です。本校では、昨年度より部活動全入制を敷き、週一回全校で集いを開き、全力で誇りを持って校歌を歌うといった気質の育成を目指してきました。また進学に対応して、一年生から特進コースを設置しています。これら一連の改革をパスカルタイムと連動して行い、学校の気運を高めているのです」と田澤榮一校長は語る。
 生徒の希望進路にも変化が出てきた。清水先生が赴任した頃、就職希望者は7割を超えていたが、現在の3年生は140人中、就職が73名、進学が67名と、進学希望者が5割近くを占めるようになった。03年度入学生はもっと顕著で、進学希望者は7割に達する勢いだ。右に倣えの進路選択ではなく、生徒一人ひとりが自分自身を人生の主人公と捉え、将来の理想像を想定してキャリアプランニングをしていく。それに必要な知識・技能を身に付けるために、上級学校への進学を希望する生徒が増えているのである。生徒は必ず「資源(リソース)」を持っている。その気づきを促し、伸ばすのがパスカルタイムなのである。
 「現在、パスカルタイムは淡路先生、渡邊先生のリーダーシップに頼りがちです。モチベーションの高い先生にできるだけ参加してもらい、今以上に取り組みを活性化させたいです。進学するにせよ、就職するにせよ、生徒が『将来なりたい社会人像』を持てるようサポートしていきたいですね」(清水先生)
 
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