ベネッセ教育総合研究所 ベネッセホールディングス
カウンセリングの手法を用い生徒の自己肯定感を育む
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パスカルタイム全体
のねらいと手法を表したのが図1である。サイコエジュケーションや構成的グループエンカウンターなどカウンセリングの手法を使った「課題」を通して、ベースとなる自己肯定感を育成。「自分を見つめる」「企業の中で継続して雇用される」「人間関係をつくる」ための三つの力を養う。
図1
 パスカルタイムには、学年や時期に応じて3年間で70近い数の課題が設けられている。「職場見学会」や「インターンシップ」など進路意識を啓発するプログラムもあるが、中心となるのはカウンセリングの手法を用いた課題だ。中でも構成的グループエンカウンター(SGE)の手法を使った課題はパスカルタイムの重要な構成要素となっている。SGEは課題を通して体験したこと、感じたことを語り、分かち合い、「ホンネ」と「ホンネ」で交流する中で生徒の「気づき」を誘発し、行動変容を起こさせることを狙ったものである。以下、「新しい自分、発見!!」の課題(図2)を例に、具体的な手法を見てみよう。
図2
 課題の目的は、他者が自分をどのように見ているかを知り、その自分と、自分で見る自分を比べることで、自身の別の側面を発見することにある。まず、生徒に課題のねらいを説明し、モデルの生徒を使ってデモンストレーションを行う。次いで、エクササイズシートに「私から見た私」「私から見た○○さん」という観点で、項目ごとに自分と他者の印象を記入、司会を一人決めて、シートを基にディスカッションを行う。淡路先生と共に運営を主導する渡邊智子先生は次のように述べる。
 「何のために行う課題なのかを生徒が理解しない状態で進めても、取り組みの効果は上がりません。そのため、実施前には必ずねらいを説明し、具体的な方法を見せることで、生徒は取り組みを進めることができます。この時、『自分も学生時代、こんな気づきがあった』と教師自身の経験を紹介すると、取り組みの浸透はさらによくなりますね」
 課題の最後に必ず行うのがシェアリングである。課題に取り組む中で、いかに生徒が新しい自分に気づくことがあっても、それを再確認しなければ取り組みの効果は上がらない。そこで実施後、生徒には毎回「振り返りシート」を記入させ、グループ内で回し読みをしたり、発表をしたりして、感想の共有を行う。
 「他の生徒の『気づき』に触れ、さらに自分も『気づく』ことが目的ですが、取り組みの成果確認、効果検証の役割も持っています。SGEでは常に生徒が今どういう状態にあるのかという、生徒の『現在地』を知ることがポイントになるので、常に生徒の意識や状態を把握するためにも、このシェアリングは欠かせないのです」(渡邊先生)
 課題の内容、生徒の「振り返りシート」は、教室内にとどまらず、「雄高パスカル便」(図3)として文書化し、全校に配付される。これにより生徒全員で情報を共有し、教師も生徒の「現在地」を知ることができるのである。
図3
 
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