ベネッセ教育総合研究所 ベネッセホールディングス
中学生から高校生への転換を図る
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高校生活導入期に向けた布石を打つ
 前号までで、1年次~3年次に至る保護者への情報提供の在り方について一通り考察することができた。しかし、保護者への情報提供の機会は、必ずしも生徒の在学中に限られているわけではない。むしろ、3年間の体系的な生徒育成を考えるならば、新入生が入学してくる前から、積極的に「仕掛ける情報提供」を考えることこそ重要である。3月に行われる新入生オリエンテーションなどの機会を「新入生の意識転換の場」と校内で位置付けることは、以後の生徒育成にも大きな意義を持ってくる。
 この時期に保護者への働き掛けを行う意図は、言うまでもなく、生徒の意識を中学生から高校生へと転換させることにある。したがって、まず保護者に伝えるべきことは、「生徒の生活が中学と高校でいかに変わるのか」「生徒の意識転換を促すために、保護者はどのようなサポートをすべきか」という2点である。学習面、生活面の双方で、どのようなメッセージの発信が求められるのか以下で見ていきたい。


1 学習面
学習習慣の転換塾依存体質からの脱却
 まず、学習面においては、授業形態が予復習を必須とするものになることをしっかりと伝えたい。特に進学校の場合、生徒の多くは中学時代までさしたる予復習をせずともそれなりの成績を上げてきた者が多い。「一日何時間の勉強が必要とされるのか」「主要3教科の具体的な予復習法」など、具体的な説明を交えつつ、できれば教務主任、各教科担当者などが中心となって情報提供を行うことが望ましいだろう。また、管理職の講話などは入学式などに回し、オリエンテーションでの情報提供は、意識転換に即効性のある話題を中心にするなどの工夫も有効である。
 その際は、教師の言葉で情報を伝えるのと並行して、是非卒業生の生の声を伝えてほしい。3月と言えば、その年度の大学入試も一段落つき、3年次の生徒の中には、時間的に余裕が出てくる者も多いはずだ。そうした生徒に声を掛け、「合格体験記」などの形で、日々の予復習の状況や授業への取り組みなどをまとめてもらうのである。新入生はもちろんのこと、保護者にとってもこうした「成功体験」の例示は、高校生活を具体的にイメージするためのこの上ない資料になる。新入生オリエンテーションを終えた親子が、共にこれからの高校生活について語り合えるような材料を与えることが、何より求められるのだ。
 一方、学校の授業の予復習を中心とした学習姿勢を確立するには、生徒を塾依存体質から脱却させることが肝要である。図1は、高校受験に向けた現高1生の学習方法の傾向であるが、実に4割を超える生徒が塾の学習を中心に受験勉強を進めていたことが分かる。
図1
もちろん、塾の学習内容は一様ではなく、生徒の学習姿勢に好ましい影響を与えるものもあるかも知れないが、結果として受け身の学習姿勢の助長につながる指導を行っているケースも少なくない。卒業生の声として「学校の予復習だけで十分な実力が付く」といったメッセージを伝えるなどして、学校の授業中心の学習姿勢を形成できるよう促したい。通塾は保護者の意向に大きく左右されるだけに、生徒・保護者が同時にいるこの機会を是非活用したい。


2 生活面
部活との両立が鍵となることを理解してもらう
 一方、生活面での情報提供において重要なのは、部活と勉強を両立させることの重要性を伝えることだろう。本誌9月号でも述べた通り、成績下降に伴って、子どもに部活を辞めさせようとする保護者は決して少なくない。だが、多くの教師が認識しているように、部活に打ち込むことは、社会性・人間性の涵養につながるのみならず、苦しい受験期を乗り切る持続力を身に付ける上でも重要な意味を持つ。「生徒が部活を辞めようとしても、頑張り抜くよう応援してほしい」というメッセージを早期に伝えておくことは、こうした問題を回避する上でも重要である。
 とは言え、口頭でその意義を説いたとしても、なかなか納得してもらえないのも事実である。場合によっては、部活を行うメリットを、数値を挙げて説明することも必要かも知れない。私事で恐縮だが、私はかつての勤務校で、部活を続けた生徒と、途中で辞めてしまった生徒を分けて、それぞれの大学合格率を比較したことがあった。部活を続けた生徒の実績の方が良かったことは言うまでもない。このような資料があれば、生徒・保護者共に学校のメッセージを納得して受け止めることができるだろう。
 
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