ベネッセ教育総合研究所 ベネッセホールディングス
中学生から高校生への転換を図る
   4/4 前へ


親子が共に語り合う材料を提供する
 以上のようなポイントを押さえておけば、新入生オリエンテーションでの情報提供はかなり充実したものとなるだろう。しかし、新入生オリエンテーションを単なる情報提供の機会と捉えるだけでは不十分である。これを「親子間の対話を生み出す場」として位置付ける視点もまた求められるだろう。
 と言うのも、中学時代の反抗期の影響もあり、高校入学直後の親子間コミュニケーションが極度に悪化している割合が高いからである。図4は弊社が実施した高1生の親子間コミュニケーションに関する調査の結果であるが、一見して、コミュニケーションが取れている家庭と取れていない家庭とに、二極化していることが分かる。
図4
しかも、コミュニケーションが満足に取れてない家庭の割合は50%程度と高く、このままの状態ではいくら学校が情報提供に努めていても、高い効果が期待できないことは自明であろう。
 したがって、新入生オリエンテーションでは、改めて生徒と保護者がコミュニケーションを取る意義について伝えたい。両者が同時に出席するせっかくの機会でもあるので、オリエンテーションを終えて自宅に帰った後、今後の進路や高校生活について語り合ってみるよう促すのもよいだろう。いざ学校生活がスタートし、生活パターンが固定化してしまうと、コミュニケーションを回復させるのは容易ではない。保護者に対しては、高校入学時が親子間コミュニケーションを回復させる大きなチャンスであることを改めて発信したい。
 ちなみに、図5のデータからは生徒の成績と親子のコミュニケーションの度合いにかなりの相関関係があることが見て取れる。
図5
親子で日々の学校生活や将来の進路について十分な話し合いを行っている生徒ほど、社会への視野や興味関心の幅が広がると共に、日々の学習にきちんと取り組めていることがうかがえる。
 さて、今回でこの企画も最終回になるが、年間を通じて大切なことは、常に先手を打って保護者に情報を提供していく姿勢である。そうしてこそ初めて「家庭による事前の意識付け→学校での指導」というサイクルがうまく回り、学校と家庭が一枚岩になった指導が実現できるのである。
 ここ数年、家庭の教育力を生かすことの重要性が指摘されつつも、それを実践するための指針は必ずしも明確ではなかった。本企画がその点に対する何らかのヒントになれば幸いである。
 
このページの先頭へもどる
   4/4 前へ
 
このウェブページに掲載のイラスト・写真・音声・その他のコンテンツは無断転載を禁じます。
© Benesse Holdings, Inc. 2014 All rights reserved.