ベネッセ教育総合研究所
特集 自学自習力の育成
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学校文化と違う文脈で、学習の意味を伝える
――先のお話は、先生のモデルで言うと、「充実志向」や「訓練志向」に立脚したお話だったと思うのですが、「実用志向」に立脚した指導についてはどのようにお考えでしょうか。
 「実用志向」に立脚した指導というのは、実は、今までの学校の指導の盲点だったのではないかと思います。「実用志向」は、生活や将来の仕事に必要な手段として学習しようという外発的な動機を持ちながら、かつ学習内容に必然性を認める「内容関与的動機」になります。学校文化の中には暗黙裏に生徒の「充実志向」や「訓練志向」を伸ばす指導こそが理想という考え方があって、「実社会で役立つからこそ学問が必要なんだ」という理由で生徒の学習モチベーションを発掘する発想については、どうしても弱い部分がありました。企業社会との交流が少なかったこともありますし、何より私も含めた教育者自身が、「実用の学」として学問を生かした経験を持っていません。
――そうすると、「総合的な学習の時間」や進路学習の取り組みとして、企業人を招いた講演会などを行うことは、一つの突破口として捉えられますね。
 そうですね。学校文化とは違った文脈で、学習することの意義を生徒に伝えられますよね。多くの生徒は企業社会の中で学習の成果を生かしていくわけですから、一生を通じて「学問そのものの楽しさ」を動機にした学習を続けていく生徒はごく少数です。だからこそ、社会とのかかわりの中で学習の意義を伝える必要性があると考えています。実際、ディベートやディスカッションの技能向上を目指す国語表現IIのような授業の在り方を、今後は他教科でも考える必要があるかも知れません。ただし、ここで重要なのは、進路実現のための学習といった場合に「受験科目にあるから」という目先の理由付けに陥らないことです。あくまでも「社会で活躍するために必要」というスタンスで学習目的を捉えないと、いざ上級学校に進んだり、社会に出たときに学習意欲を失ってしまいかねません。


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