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Part1 学校組織・実践の側面から 機能させる力 |
教育システムを工夫したり、教師の指導力向上を目指したりすることは、生徒を学びに向かわせる上で欠かせない要素だが、それらを支えるのは取りも直さず学校組織である。高崎高校が進学実績、部活動共に優秀な実績を上げている背景には、同校が持つ「学校力」がある。本項では、「実践力」「機動力」「柔軟性」の3つのキーワードから検証したい(図2)。 |
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実践力
学年団の機能化 |
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同校の強みの第一は、同校の指導方針である「総合的な人間力の育成」が、学年団を中心とした高い「実践力」で取り組まれている点だ。同校では学年を「基本的な母集団」として位置付けており、1学年主任の山口和士先生はその意味を次のように述べる。
「学年はクラス運営を母体としながら相互に錬磨し合う精神集団です。その意味では、単に生徒の指導だけではなく、教師の成長も意図する集団でなければなりません。生徒も教師もお互いに学び合う中で、生徒の人間的成長を促し学びへの意欲へと導く、それが学年団としての力を生むのです」
同校の学年団は1学年の生徒数320名に対して教師13名と決して多くはない。しかし、少人数の学年団だからこそ、社会や生徒気質の変化に機敏に対応できる。例えば、進路指導に欠かせない大学情報を得るにも、学部・学科で何を教えているのか、偏差値はどの程度必要なのかといった基本情報にとどまらず、地方国立大の若手教員の論文に目を通し、力があると判断すれば、すぐに話を聞きに行く。さらに、OBや社会人との接点を持って、頻繁に情報収集する│。一人ひとりの教師が常に社会に対してアンテナを向け、変化に敏感に反応し行動して、それを生徒に還元していく実践力が学年団の強さにつながっているのだ。
また、学年団に活力を与え実践力を維持させるには、教師一人ひとりのやる気や行動力を妨げないことも重要である。
「先生方からアイディアが出たときは、いつも『存分にやってみろ』と言っています。大切なのは先生方の活動にブレーキを掛けないこと。ブレーキを掛けないということは、教師一人ひとりが想像力を働かせなければならないということです。例えば、04年度に実施されるNASA教育プログラムへの参加企画(※)も『世界最先端の科学技術に直接触れることで知的好奇心が喚起されると同時に、豊かな国際感覚が磨かれる』という発想から生まれました。想像力を働かせることで新しい試みが生まれますし、生徒の信頼も勝ち取ることができるのです」(山口先生)
※04年8月に、高崎高校と高崎女子高校の生徒が米国航空宇宙局(NASA)等を見学する11日間の研修に派遣されることが決定している。これは県教委が派遣するもので、高崎高校からは2年生80名が参加する。
こうした様々なアイディアは、日常的な学年内での会話から生み出されることが多い。普段の何気ない会話の中で出てきた案に対しても、数人が賛同すれば即実行に移される。さらに、教師間で生徒育成ビジョンや取り組みに対する目線合わせも行われる。教師一人ひとりが常にアンテナを張り情報を集め、想像力で具体的な施策に落とし込んでいく。こうした軽快なフットワークと生徒指導に対する教師の意識の高さが、同校の実践力を支えているのである。 |
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