自律的な学習への転換を図る「学習実行表」と「総合学習」 |
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以上のような手順を経て、同校では1年間を掛けて、新入生の基本的な学習習慣を徹底的に確立する。次の2年次では、生徒の中に自律的な学習姿勢を育てていくことが目標となる。この転換を図るための取り組みの中で、2年2学期からスタートする「学習実行表」(図3)の作成は、大きなウエートを占める取り組みのようだ。 |
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生徒に自ら立てた学習計画を実行させることで、意識改革を図る「学習実行表」。あくまで達成感を獲得させることが目的なので、名目だけの「予定表」とならないよう、教師がこまめにチェックする。 |
生徒に学習計画を立てさせることで、どのように自律的な学習姿勢を育成しているのか。近藤先生は次のように説明する。
「『学習実行表』は、書式としてはいわゆる学習計画表に近いものです。しかし、『実行表』と名付けたように、たとえ学習時間は少なくとも、本当に生徒が実行できるプランを考えさせることに意味があるんです。計画を実行できたという達成感を生徒に自覚させることによって、学習目標の設定→学習計画の立案→達成感の獲得というサイクルを、生徒の中につくり出すわけですね」
このような目的を達成すべく、「学習実行表」は、「定期テスト直前用」「長期休暇用」といった形で、あえて期間を区切った書式としている。「1か月100時間学習」「定期テスト直前計画」といった具合に、生徒の目標設定をしやすくするのがそのねらいだ。
「漠然と『年間の学習計画を立てなさい』と言っても、実効性のある計画を立てられる生徒は少数です。時期を区切って、まずは実現可能性の高いプランをつくる訓練をするところから、生徒を慣れさせていくわけです。また、『学習実行表』のタイムスパンと生徒との個別面談のタイムスパンは合わせてあります。これにより、生徒がくじけそうになった場合でも、適切なタイミングでアドバイスを与えることができます」(近藤先生)
また、「学習実行表」の達成状況については、機を見て学年全体で集計し、学年としての計画達成率が示される。
「個人で計画を立てて、黙々とそれを実行するのは容易なことではありません。『集団との比較』という要素を適宜入れ込むことで、生徒の学習モチベーションの維持を図ります」(四倉先生)
一方、「学習実行表」の活用と歩調を合わせて、「総合学習」による本格的な進路学習も2年次からスタートする。そのメニューは職業研究、学問研究、学部・学科研究などを主軸としたものであるが、同校ではそれらに加え、ディベートやグループディスカッション等、生徒同士の関係づくりにかかわる取り組みも重視している。
「『総合学習』では、『将来の進路実現のために学習が必要だ』という個人レベルでの動機づけに加えて、『学習集団』としてクラスの求心力を高めていくことも狙っています。ディベートやグループディスカッションは、技能の修得はもちろん、クラスの関係づくりを進める一つの手法でもあります。最近の生徒は、調べ学習やグループワークに高い能力を発揮しますから、『総合学習』を関係づくりのきっかけにする手法は、案外受け入れやすいのかも知れません」(四倉先生)
同校が「受験は団体戦」というスローガンを掲げていることは既に述べたが、同校の「総合学習」は生徒個々人が学習の意味を自覚する場であると共に、クラスが「集団」として、学習に向かう体制をつくる場でもあるのだ。 |