ベネッセ教育総合研究所
VIEW'S REPORT 変わる大学入試で求められる教科学力
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数 学
数学的な思考力を身に付けるアプローチ法とは


思考力の低下が指摘される高校生の数学力の実態
 先般の文部科学省の高3生学力調査結果に関しては、理数科目の学力の低下が新聞紙上で大きく取り上げられた。問題の難易度は、教科書レベルであっても、教科書とは問い方がかなり異なっていたため、何を問われているかを読み取り、どう答えてよいのかが、分かりにくかったことも一つの要因ではないかと考察できる。
 同様に、入試問題でも、昨年東京大で図6に示した問題が出題されて話題となった。
図6
普段、当たり前に思っていることを改めて問われたり、簡単なことでも慣れない問われ方をすると、どこから手を付けてよいのか分からず、思いの外難しくなる。本質的な意味を正確に理解しているか、数学的に思考する力を身に付けているかということは今後益々問われることになりそうである。


入試突破に必要な4つの数学力と7つの思考法
 では、そもそも高校生にとって必要な数学力とはどういうものになるのだろうか。考え方はいろいろあると思われるが、現在進研ゼミでは、図7の「4つの力」を定義している。
図7
進研ゼミ高校講座作成
 ポイントになるのは、「分野の理解力」と「解法を組み立てる力」の2つである。この2つの力が軸となり、実際の問題を解き崩していくことになるからだ。どちらか一方だけというのでは、問題を解くことが困難になる。
 一方、「計算力」と「答案作成力」は実際に問題を解いていくときに必要な力であるが、これらも数学力低下を議論する際に出てくるテーマである。
 「計算力」については、最近大学でも分数の計算ができない学生がいる話が出たりするが、問題の解答を見て納得するだけで、自分で実際にノートなどに書いて計算してみるということが減り、計算力が低下しているように思われる。
 また、「答案作成力」については、大学の教員から、入試の答案で意味が通じないものが多くなっているという声を耳にすることがある。
 入試突破を目指すときに、これら4つの力はどれも軽視することはできず、最終的にはいずれも正しく身に付けておく必要があるだろう。
 次に、少し具体的に見ていくために、特に重要な力である「解法を組み立てる力」、すなわち数学的な思考力について深く掘り下げてみたい。
 解答するとき、やみくもに考えたらうまく答えが得られた、ということがあるかも知れないが、それでは次回またうまくいくとは限らない。やはり考えていくときのアプローチの仕方というものが大切になってくる。その思考するときのキーワードとして、進研ゼミで現在考えているのが、図8の「7つの思考法」である。
図8
進研ゼミ高校講座作成
 具体的に例を示すと、次のような考え方である。
○三角関数の2次方程式を、sinx=tなどと置くことでtの2次方程式にすることを「簡単化」
○関数や図形の問題を式だけで処理するのではなく、実際に図やグラフをかいて目に見える形にして思考することを「視覚化」
○数列などでnのまま考えるのではなく、具体的にnに1、2、3と数値を代入して考えていくことを「具体化」
○最大値・最小値を求める問題で場合分けして、個々の状況をそれぞれ考えていくことを「分解」
 主だった問題を解くときの思考法をこのように整理していくと、図8の7つに絞り込まれてくるのではないかと考えている。


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