ベネッセ教育総合研究所
特集 広報が学校を活性化する
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外部識者を交えて新たなSIを具現化する
 同校が01年度から着手したのは、新時代を担う人材要件を、学校としてどのように捉えるか議論することであった。昨今の教育環境の変化を受け、こうした議論は全国各地の高校で行われてきたが、同校のそれは、他校にはない斬新な手法が取り入れられた。すなわち、卒業生の受け入れ側である、地元企業や大学人と共に、育てたい人材要件を確定させたのだ。
 「新学科の『開設準備室』を中心に、堀場製作所などの地元企業や大学人、それにマスコミ関係者との懇談会を数多く設定しました。教師がいくら集まっても発想には限界がありますし、本当に社会が求める人材像を知るには、卒業生を受け入れる側の意見を聞くのが何よりですから」(関目校長)
 実際、「進取の気質に溢れた」「困難にあえて立ち向かう」といった意味合いを込めた「エンタープライジング科」という学科名称自体、この議論の中で確定されたものだという。
 また、この議論に当たって注目されるのは、外部からの意見を「英語が使える」「コンピュータが使える」といったキーワードで終わらせず、「ビジネス文書を英語で書ける能力を育成する」「Eメールを使った円滑なコミュニケーションができるレベルのコンピュータスキルを育成する」といったレベルまで具体化していったことだ。開設準備メンバーとして、この議論をリードした村上英明教頭は、こうしたアプローチは、従来の商業科での教育を総括した結果、取り入れたものと語る。
 「本校が長年行ってきた教育は、言わば『従業員を育てる教育』で、時代の要請にもマッチしていました。しかし、現在の企業や大学人が求めているのは自ら判断し、斬新な発想で行動できる『起業家』型の人材です。このミスマッチを解消できなかったことが、従来の商業教育の行き詰まりにつながったのではないかと考えました。そこで新学科の設立に当たっては、『御社が必要とする人材を育てますから、意見を聞かせてください』という、従来とは逆のスタンスで議論に臨みました。だからこそ、教育の具体的な手法にまで踏み込んだ議論が可能だったのです」
 こうしたアプローチは、学校の理念の確立に効果を発揮したのみならず、新学科に対する地域の期待を醸成することにもつながった。
 「議論に参加した企業の社長やマスコミ人の多くが、学校設立後も講演会や出張授業への参加という形で、学校運営に協力してくださっています。社会に開かれた学校づくりを進めていくというメッセージが、議論の中で地域社会に浸透していったのだと思います」(村上教頭)


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