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自己効力の育成があらゆる段階で学力を伸ばす |
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前項では越えるべき「壁」を学力到達度別に検証したが、最後に学力向上を図る上で、あらゆる学力層の生徒に有効な「自己効力」について触れておきたい。
自己効力は成功体験や達成感、他者への役立ち感から生まれる。こうした経験から「やればできる」「自分もまんざらではない」という自分への期待が膨らみ、学習への意欲が育まれる。したがって教師は生徒の自己効力を育てる指導について絶えず意識を働かす必要があるだろう。
もっとも、あらゆる層の生徒に同じような成功体験を与えようとすることは現実的ではない。前項の3つの「壁」でいえば、偏差値48、58、68それぞれの層に対して有効な自己効力の育み方は異なる。例えば、黒板を見なくても先生の話がノートに取れるようになったことを教師が褒める事は、偏差値48の壁を越えようとしている生徒にとっては成功体験になるかも知れないが、偏差値58、68の生徒にはあまり意味がないだろう。偏差値58のレベルの生徒なら、習得した問題解法のパターンを必要な場面で活用できたことが達成感になるだろうし、メタ認知が強く働く偏差値68のレベルの生徒には、自分で立てた仮説を学習の中で自ら検証できることが成功体験につながる。
自己効力について難しく考える必要はない。ほんの小さな成功体験を与えるだけでいいのだ。全ての生徒に毎時間与えることは無理だとしても、1週間に一度、それぞれの生徒に対して成功体験を与える仕掛けを準備する。更に、生徒の行動変化を見逃さず、褒めたり励ましたりすることで、より上のステップを目指すようになるのである。
※本稿で示した「学力向上プロセス」は、高校の先生方とベネッセ教育総研との共同研究の成果であり、仮説の域を出ていない。偏差値による学力の壁の設定そのものが適正か、それを克服する方略は妥当であったか、読者の先生方のご意見・ご批判をお待ちしている。 |
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