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STEP1
偏差値48の「壁」 |
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まず、第一の壁が偏差値48のレベルだ。これを越えると中堅私立大や、地方国公立大クラスへの合格が視野に入ってくる。
この壁を越えるためのポイントは「習得型学習の定着」である。
習得型とは教師が伝達する知識を生徒が摂取する「学び」のことで、具体的な生徒の行動は「宿題を確実にこなす」「先生の話をノートに取れる」などの形で現れる。ノートが取れるということは、単に板書を書き写すのではなく、生徒が教師の発する言葉を背景知識と重ね合わせて「意味理解」できている状態である(重ね合わせ的理解)。
習得型の学習が定着すると、生徒は「解」として何が求められているのか、また、その日の授業の中でどこに重要なポイントがあったのか、といった判断ができるようになる。そして、自分自身が理解できた学習領域と未達の領域を区別できるようになるため、効率的な学びが可能になるのである。
この「習得型学習」を成立させる必須要件は、宿題を確実にこなすなど、何よりも「強制こそ学習」だと生徒が納得することだ。
「これをしなさい」と言っても、生徒はその必要性を理解しても、納得するとは限らない。生徒と教師の信頼関係の成立が前提となる。例えば、多くの学校で実践されている「家庭学習の記録」の点検は、有効な手段の一つだろう。弱点克服のアドバイスをしたり、参考書の紹介をするだけではなく、時には褒めたり励ましたりすることで、「先生はいつも自分のことを気にかけてくれている」という思いを生徒に抱かせることができる。「生徒が教師についてくる」状態を作り出すことが重要だろう。 |
STEP2
偏差値58の「壁」 |
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第二の壁は、ブロック大やMARCH(※2)・関関同立クラスの私立大などへの合格が見えてくる偏差値58のレベルである。 |
この壁を越えるには「習得型学習」に「学習方略」重視の学習方法を加味することが必要だ。もちろん、生徒一人ひとりにとって有効な学習方略は異なるが、「数学や物理などで問題解法のパターンが使える」「数学は復習、英語は予習に力点を置く」など普遍性の高い方略にシフトしていくことが欠かせない。
もう一つのポイントは「知識の体系化」を行うこと。人間は個々の知識をつなぎ合わせて体系的に思考しているが、そうした思考力を鍛えることで、個々の事象を関連付けて「知識」を使えるレベルに高めることができるようになる。
このレベルでは、既に生徒は学習習慣がある程度定着し、教師に対して「ついていけば安心」という信頼感を抱いていることが多いので、教師はプロデューサー的な役割に徹することが望ましい。職業研究や学部・学科研究で、学びの目標を書かせたり語らせる進路学習は最もポピュラーな方法の一つである。また、偏差値58をクリアできる程度の問題を見繕って生徒に提示する方法も考えられる。いかに教師が裏方に回り、生徒が自律的に学びに向かうための条件を整えることができるかがポイントになる。 |
STEP3
偏差値68の「壁」 |
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第三の壁は偏差値68、早稲田大・慶應義塾大や旧帝大が視野に入ってくるレベルだ。
このレベルにおけるテーマは「方略重視から仮説検証型の学習へ」である。仮説検証とは、自分で仮説を立てそれを検証する学習ができるようになるということ、つまり「自問自答型の学習」を組み込むことである。
ここで重要なのが「メタ認知」(※3)の概念である。 |
人間は自分自身で学習方法を修正する能力を持っている。例えば、数学の問題がなかなか解けないときに、今使っている定理とは別の定理が有効であることに気付くことがあるが、これは「メタ認知」が働いている証拠である。もちろん、そのためには背景知識が必要で、STEP2で見たように知識の断片を体系化し相互に関連付けて考え、取り出す訓練が必要になる。
こうした能力を鍛える方法はいろいろ実践されているが、「ピンポイント学習講座」はその一つだろう。模試などの結果、ある特定の問題を間違えた生徒だけを集めて、なぜ間違えたのか、どうすれば解けるのかを徹底的に指導するのだ。どのような知識や考え方が要求されているかを徹底的に理解させる。単に答えが合っていればよいということではなく、本質的な考え方を学べば応用力が育まれる。
以上、学力層ごとに有効と思われる学習方法、動機づけのポイントを述べたが、一斉指導を基本とする授業の中で、個別に対応していくのは限界がある。授業はあくまで学校あるいはクラスの最大公約数の生徒が目指す大学の要求学力に焦点を当てて行い、下位層には課題提出やノートの点検を徹底したり、中・上位層に対しては通常の課題に加え発展問題を提示して、添削指導を行ったりするなど、学力層に応じた個別のメニューを拡充していくことが望ましいだろう。 |
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