どのような法曹を目指すのかを考えた進路選択が重要に |
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では、法曹に対するニーズ、活躍できるフィールドは、今後どのように広がっていくのだろうか。そして、法曹を目指す者が持つべき心構えとは――。
「これまでは、少数の法律家が小さいパイを分け合っても、十分生活できました。だからことさらにマーケットを開拓することもなかったわけです。しかし、国際化が進展し、文化や価値観が多様化する社会では、あらゆることが法的に処理されるリーガリゼーション(法制化)が進むのは必然の流れです。今後、日本でも法曹が社会に果たす役割は飛躍的に高くなるのは間違いありません。法律家の能力とやる気次第で、無限とも言えるほどのマーケットを広げることができるのです」(中央大・森教授)
法曹の活躍の可能性が広がるということは、一面、どのような分野で活躍したいのか、自分自身で将来像を描かなければならないという「厳しさ」を合わせ持つ。単に「法律家になりたい」と願うのではなく、「どのような法律家になりたいのか」を考えて学部から法科大学院までの進路選択を行うことが重要になってくるだろう。
必ずしも法律家になりたいから法学部に行くというだけではなく、例えば、知財訴訟に強い法律家になるために理工系の学部に進む、医療訴訟の分野で活躍したいから医療系学部を受験する、などの選択肢も十分に考えられる。法学未修者を受け入れる法科大学院の設置は、高校生の学部志望の選択肢をも広げることを意味するのだ。
法曹を目指す人に、一橋大・松本教授は次のメッセージを送る。
「我々も単に司法試験の合格を目指すというだけではなく、法曹になった後に伸びる人材を育てていきたいと思っています。ですから、法曹を目指す人には、司法試験に合格した後に、自分はどういう道を進むのかという点をしっかりと見据えてほしいですね。法律家に必要なのは柔軟かつ論理的に考えられる思考力と、社会を良くしたいと願う熱いハート。高校生の時から論理的な思考力を磨くと共に、常に社会に関心を持って自分の意見を持つよう心掛けてほしいと思います」 |
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初めての新司法試験の結果が出る06年度入試が、法科大学院にとって最初の試練となる。年内には試験科目の概要や新試験と現行試験との合格者比率も発表される見通しであり、司法制度改革の全貌が徐々に明らかとなっていく。また、5年以内に第3者評価機関の評価を受けることが義務化される。今後とも、法科大学院の行方について注視していく必要があるだろう。 |