ベネッセ教育総合研究所
指導変革の軌跡 埼玉県・私立淑徳与野高校「生徒の”個”と向き合う指導」
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成績上位者をも対象に含めた「学習サポート」
 同校が「生徒の”個“と向き合う指導」として02年度からスタートさせたもう一つの取り組みが、「学習サポート」と呼ばれる各教科担当による個別面談指導である。成績不振者に対する個別面談ということであれば、取り立てて珍しいものではないが、同校では、成績上位者が個別指導の対象になることも少なくないという。これは一体どういうことなのか。加藤秀爾先生は、生徒を選抜する同校独自の基準を次のように説明する。
 「『学習サポート』の対象になる生徒の基準は、『教師がもう少し関わりさえすれば、大幅な成績アップが見込まれる』状態にある生徒です。つまり、成績下位層にいる生徒ばかりではなく、スランプに陥っている生徒や、伸び悩みに直面している上位層の生徒も対象に含まれるのです」
 このような基準に照らし、同校では長期休暇の度に、主要科目ごとに1クラス当たり3~6人の生徒が選抜される。生徒の選抜は1・2年次は各教科担当の、3年次についてはクラス担任の役割となっている。ある意味で、この取り組みの成否は、生徒を選抜する教師の側が、いかに一人ひとりの状況を細かに把握しているかにかかっているというわけだ。生徒把握の際に活用されるのは、校外模試や定期考査の成績、そして、先に紹介した「HRノート」など学校独自の生徒把握ツールである。
 また、この取り組みが、補習などの受け身の学習機会を用意するのではなく、生徒が自ら実行するための「学習計画」の立案をサポートすることにこだわっている点も注目できるだろう。
 「強制的な学習機会を与えても、本当の意味で生徒の実力を伸ばすことは難しいと考えました。むしろ、学習に行き詰まっている状況をきちんと生徒自身が把握し、生徒が自分の力でその壁を乗り越えるサポートをしていく方が大切だと考えました。もちろん、生徒が納得して学習に向かうためには、各教科担当とも話し合って、実効性のある学習計画を考えることが欠かせません」(矢吹先生)
 「生徒の”個“と向き合う」ことを重視する理念は普段の授業でも徹底されている。例えば英語科では、全学年に週1回、月曜日に5分、語彙力定着テストを実施しているが、基準点を下回った生徒に対しては、あくまでも「満点を取れるようになるまで」、教師はとことん追試に付き合うのだという。英語科の堂坂文彦先生は、この点へのこだわりを次のように語る。
 「追試を行うことにこだわれば、当然教師の負担も大きくなりますが、安易に『赤点救済』につながるような指導は行いません。英語科では、金曜日の放課後に、『英語学習の日』を設け、追試に加え、通常の英語学習でやり残しのある生徒にもこまめにフォローを入れています。なお、月曜日の語彙力定着テストの実施は各担任にお願いしています。本校では英語教育を特色としているため英語の取り組みには比較的サポートが得られやすいのですが、他教科のことであっても、担任が生徒を指導する場面があることが、生徒に良い影響を及ぼしているようです」


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