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1 『富士高の進路』と併用して活用 |
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『進路ストーリー』の原案は、進路指導部によって作成された。現在その運用は学年主導で行われており、記載されたノウハウの共有もほとんどは学年会の場で行われる。
「学年会ごとに確認作業をすることで、本校の指導が『進路ストーリー』を中心に進められることを新任の先生も意識できます。前年度の内容から漏れがないか、付け加えるべき指導がないか、といった視点を、全員が話し合いながら共有できるので、『ただ書いてあることを自己確認するだけ』になってしまうのを防ぐことができるのです」(小久保聖一先生)
一方、『進路ストーリー』は、内容を簡潔に示すことを重視しているため、個々の取り組みの細部については、必ずしも詳細なものではない。そこで同校では、特に重要な取り組みについては、より詳細な取り組み内容を示した資料である『富士高の進路』という冊子を別に用意して指導の精緻化を図っている。この冊子には、模試の趣旨、各時期の面談ポイント、補講計画等が詳細に記してあり、『進路ストーリー』と併用することで、進路指導をより効果的なものにしている。 |
2 入試検討会を通じた体感的な指導の伝承 |
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同校では、『進路ストーリー』の記載内容を理解するだけにとどまらず、そこに記された指導法を生きた知識として習得する場もまた設けられている。それこそ、同校伝統の入試検討会である。
「入試検討会は、3年生の進路実現に向けて、3学年主導で実施するものですが、本校では、1、2学年の教師も積極的に参加しています。そうすることで、3学年を縦に俯瞰した指導の流れが見えるようになると共に、自分たちが受け持っている生徒の、1年後、2年後を意識した指導が行えるようになります。また、実際の話し合いの場を目の当たりにできるので、例えば『進路ストーリー』では、7月の第2回入試検討会について、単に『今春の入試の全体像を把握し、来春の入試の展望及び予測をする』としか書かれていないことが、具体的にどのような話し合いやデータ分析を行い、指導に生かすのかが体感的に理解できます。知識として『進路ストーリー』を学ぶと同時に、学年を越えた教師間でそれを実践しながら学ぶ機会を設けているのです」(小久保先生)
入試検討会の開催ペースは年6回。『進路ストーリー』を読むだけでなく、実際に体感する場を定期的に設けることで、同校の教師たちは体に「富士高の指導」を刻み込んでいくのだ。 |
3 生徒・保護者にも配付する「進路指導計画」 |
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同校では、『進路ストーリー』や『富士高の進路』の内容を、生徒向けに編集し直し、各学年ごとに1年間の進路指導の流れを記した『進路指導計画』というプリントも作成している。「長期的な指導の流れを知ることは、学習プランを生徒自らが組み立てる上でも有効」(川口先生)という認識に立ってのことだ。ここで着目すべきは、その配付の仕方である。すなわち同校では、時には学年集会まで開いて、必ず教師の講話とセットで『進路指導計画』を配付しているのだ。
「配るだけなら簡単ですが、それをきちんと生徒が理解するためには、全員でそれを読み込むような場が必要です。また、ある年には、『今月の目標』という欄をわざと空欄にしておいて、生徒自身に書き込ませるような工夫をして、その時々の目標を生徒に自覚させたこともありました。発信したメッセージを生徒にいかに確実に伝えていくかについては、今後もいろいろな手法を考えていかねばなりませんね」(嶋先生)
更に『進路指導計画』は、生徒のみならず保護者にも配付される。アカウンタビリティーの確保に加え、「指導計画を事前に知ってもらうことで、学校の指導に対する積極的な協力を引き出すこと」(嶋先生)がその狙いだ。その目的に照らし、04年度3学年の保護者に対しては、年度当初にまず、1年間の内容をまとめたバージョンのものを配付した上で、1か月ごとにその内容を再編集した『進路指導計画』を生徒を通じ再配付している(図2)。 |
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以上のように、同校では『進路ストーリー』を活用すべく、ソフト・ハードの両面から様々な工夫を加えている。『進路ストーリー』が10年にも渡って指導のペースメーカーとして機能し続けてきたのは、ひとえにこのような工夫があればこそである。『進路ストーリー』を核にした指導が高いレベルで達成されている同校の事例は、他校にとっても参考になる部分が多いのではないだろうか。 |
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