ベネッセ教育総合研究所
シラバスの活用 教師の目線合わせにシラバスを生かす
●宮城県泉松陵高校
1981年(昭和56年)設立の公立高校。普通科の共学校(1学年8クラス)。宮城大、山形大など国公立大に7名、東北学院大、東北福祉大など私立大に延べ233名が合格。
URL:http://www.shoryo.
myswan.ne.jp/
小島輝彦
宮城県泉松陵高校
小島輝彦
Kojima Teruhiko
教職歴13年目。同校に赴任して6年目。公民担当。2学年主任。「能力を100パーセント出し切れる生徒を育てたい」
吉田信哉
宮城県泉松陵高校
吉田信哉
Yoshida Nobuya
教職歴15年目。同校に赴任して5年目。国語担当。「『できない』と諦めず、『やればできる』と思える生徒を育てたい」
西澤硬
宮城県泉松陵高校
西澤硬
Kokubo Seiichi
Nishizawa Kou
教職歴15年目。同校に赴任して7年目。理科担当。「生徒が自らの希望をかなえて卒業できるような学校をつくりたい」
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事例2 宮城県泉松陵高校
教師向け進路シラバスを基に学校改革を推進
シラバス作成の大きな目的の一つが、学年、あるいは学校としての指導の目線合わせにあることは間違いない。しかし、作成当初はともかく、継続的に記載内容に基づいた指導を実践するのはなかなか難しい。「進路シラバス」を軸に指導の目線合わせを行っている、2校の事例を参考にしたい


進学校への脱皮を機にシラバスを作成
 泉松陵高校では、現行課程へと移行した03年度を機に、SI委員会が中心となって「教師向け進路シラバス」に相当する「学力向上マップ」を作成した。その背景にあったのは、「学校の在り方そのものを見直す学校改革だった」と小島輝彦先生は言う。
 「いわゆる『多様校』としての指導を続けてきた本校ですが、数年前から、生徒の過半数以上が4年制大学への進学を希望する状況になってきました。全国の進学校の事例を参考に新たな指導スタイルを確立すると共に、それを明文化して全教師が共有する必要があったのです」
 だが、03年度当初に作成した「学力向上マップ」は、必ずしもうまく機能しなかった。
 「年間計画を一気に示す形式にしていたのですが、それでは日常的に年間計画を共有することは難しいことが分かりました。現に学年の先生方で指導のぶれが露呈したケースもありました」(小島先生)
 こうした状況を踏まえ、同校では03年度の後半から「学力向上マップ」に、ある改良が加えられた。


1 月刊化して見直しのチャンスを増やす
 改良点の第一は、次ページに示したように、「学力向上マップ」を「月刊化」した点である。年間計画をその都度見直せるように小分けにし、学年主任が1か月ごとに学年団の教師に配付するスタイルに改めたのだ。また、年間計画を固定的に捉えるのではなく、月ごとに教員に「運営方針」を聞き、それを踏まえて指導内容に細かな調整をかけるようにした。
 「記載されている内容を踏まえた指導をするために、生徒・保護者へどのような働き掛けが必要かを先生方に伺います。まとめた結果は学年会で協議し、次の『学力向上マップ』の作成にも反映します。生徒の状況変化に応じた臨機応変な対応が学年として取りやすくなりましたね」(小島先生)


2 精緻な内容で指導のぶれを防ぐ
 月刊の「学力向上マップ」には対生徒と並んで「対保護者」の項目が盛り込まれている。
 「最近の保護者は高校生となった子どもにどう接してよいか分からない方も多いのが現状です。またPTA集会への参加率も芳しくないなど、どうしたら学校の指導への保護者の理解が得られるかがポイントになっています。そこで先生方にも保護者に対して何を意識すべきか月ごとに確認できるようにしたのです」(吉田信哉先生)
 こうした努力は「学力向上マップ」だけにとどまらず、生徒の生活指導の基準を示した「生徒心得」などにも徹底されている。
 「指導の足並みを揃える必要性は、進学・学習指導の基礎となる生活指導においてはより高いのではないかと考えました。服装、授業中の私語、遅刻認定の基準などもすべて明文化し、一人ひとりの教師の指導視点が揃った体制づくりを進めています。こうした取り組みの成果だと思いますが、1年から2年に学年が上がったとき、大幅な担任の入れ替えがあったのですが、指導のぶれは例年より出ませんでした」(西澤硬先生)


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