ベネッセ教育総合研究所
特集 進路学習の深化を探る
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2年 視野を広げるために全員共通のテーマ学習を展開
 さて、職業研究というオーソドックスな手法でスタートした同校の進路学習。一般には、その後に続くのは就きたい職業を踏まえた「学部・学科研究」ということになろう。だが、同校ではあえてその定石を外したプランを立てている。2年次ではまず、テーマ学習に重点を置いた小論文学習へと移行するのだ。その背景には次のような考えがあるという。
 「1年次に職業研究を行い、文理レベルで一応の志望は決めさせますが、あくまでもそれは将来の大まかな見通しを立てるためのものにすぎません。実際、多くの生徒はまだ自分の進路を漠然としかイメージできていませんし、『決めた』という生徒にしても、その多くは、将来やりたいことを多様な観点から検討した上で決定に至ったわけではありません。この状態ですぐに『学部・学科の絞り込み』に入ってしまっては、かえって生徒の可能性を狭めてしまうと考えました。今一度自分の進路志望に揺さぶりをかけるための、『溜(た)める期間』として、2年次の活動を捉えています」(長谷川葉子先生)
 それゆえ、2年次の取り組みは事実上、社会への視野を広げるためのテーマ学習となっている。しかも、自分の興味・関心領域からテーマ設定するのではなく、文理を問わず生徒全員が、「医療、福祉、情報化」という、三つのテーマを学習するプランが用意されている。鳴海安久先生はその狙いを次のように語る。
 「この小論文学習の目的は、近未来社会のキーワードを通して広い視野や知識を身に付けることです。明確に進路を決められない生徒にとっては、他の生徒の研究発表に触れられるため、今一度広い視野を持った上で、進路を考える機会になりますし、既にしっかりと決めている生徒にとっても、別の角度から進路について考える機会になっていると思います。生徒が興味を持ったテーマのみに取り組ませるやり方では、このような狙いの達成は難しいと思いました」
 もちろん、「自分の興味・関心や進路とは関係ない」と考える生徒が出てくる懸念はある。そこで同校では、朝のSHR前10分の「朝自習」の場を通じ、1年次から世の中の幅広いトピックに触れさせ、視野を広げる活動に対する生徒の興味・関心を高めている。
 「朝自習のうち週2回は、新聞等の切り抜きを生徒に読ませ、それに対する意見を200~300字程度でまとめさせています。どの記事を選ぶのかは各担任の裁量に任せていますが、できるだけ様々な分野をカバーできるように互いに調整しながら記事を選んでいます」(鳴海先生)


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