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着実に進む学外への波 |
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「成長するティップス先生」の応用編と言えるのが、Web上でシラバスの作成能力の習得・向上を図る「ゴーイングシラバス」だ。ティップスで身に付けた授業デザインの手法を、シラバスの作成を通して実践していくためのツールで、「シラバス」「授業の記録」「みんなの部屋」の3機能を持つ。
このツールの特徴の一つは、ティップス同様、教員が自発的にシラバスを作成し授業改善に取り組めるように工夫されている点である。例えば、「シラバス」には授業の到達目標や成績評価の方法、授業計画・課題など、入力する項目ごとに入力ガイドが設けられており、シラバス作成に際して留意すべき点をすぐに調べることができる。
もう一つの特徴は、学内・学外を問わず「ゴーイングシラバス」の内容のほとんどを閲覧できる点だ。
「『シラバス』には1コマごとの授業計画と共に、その時間までにやっておくべき課題も提示してありますし、『授業の記録』では、授業で使う教材や参考文献、学生の成果物などを掲載できます。教員にとっては、同僚の授業の仕方を知ることができるので、自らの授業改善に役立てることができる。また、学生はいつでも授業内容を振り返ることができるので、学生の自律的学習を促す上、他の学生のレポート等を見ることで身を入れて課題に取り組めるようにもなるのです」(黒田教授)
こうした内部効果と並行して、特色GPの要件である他大学への波及も着実に進みつつある。「成長するティップス先生」は、様々なメディアで取り上げられたこともあって、毎月2万件以上のアクセス数を維持。「ゴーイングシラバス」は、都立大や南山大、立命館大など多くの大学で採用されているという。今回の特色GP選定の背景には、同大のFD活動の技術・ノウハウが、全国の各大学へ波及しつつあるという点にもあったようだ。
今後の課題は、学内のすべての教員が「ゴーイングシラバス」を活用する体制を整えることだという。
「この取り組みは、あくまで教員の自発性に委ねるため、教員に『ゴーイングシラバス』の使用を強制しているわけではありません。本センターでは、Web上の授業支援ツールと並行して一斉型のFD研修も実施していますが、そうした場でティップスや『ゴーイングシラバス』の利点を説き、全学的な普及を図っているところです」(黒田教授)
研究志向の大学でありながら、教育改善に取り組む同大の活動(※3)は、学部教育の在り方を再定義し、学びの活性化を図る象徴的な動きと言えるだろう。 |
※3 名古屋大では全学的に教養教育の充実を推進する組織として、01年に「教養教育院」が設置された。高等教育研究センターのFD活動と合わせて、全学的に教育改善に取り組む体制がつくられている。 |
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