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2 簡潔な表現を追求し、単元の相互関係を整理 |
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しかし、単元ごとに簡潔に到達度目標を示すのは、容易なことではない。「できるようになること」を羅列していくだけでは、記載内容が膨大なものになってしまうからだ。実際、石塚学先生が担当する数学においては次のような問題が発生した。
「数学では当初、単元で習得すべき内容を、できるだけ細かく示すことを考えていました。例えば、二次不等式の単元なら、『因数分解を利用できる』『解の公式を利用できる』『二次関数のグラフを利用できる』といった具合に、身に付けてほしい到達度目標を多数示そうとしていたのです。しかし、これでは項目数が増えるばかりか、その単元で最終的にどのような力を身に付けさせたいのかが見えにくくなってしまいます」
このような問題は、他教科にも共通するものだった。そこで同校では「AとBができるようになればCもできるようになるはず」といった観点で、到達度目標の相互関係を整理することにした。具体的には、「多項式が解け、二次関数のグラフを利用できれば、二次不等式を解くことができる」といった具合にである。そして、シラバスに記載するのは厳選された目標であるCのみにすることとした。これなら記載内容を簡略化した上で、各単元で最終的に身に付けるべきことも端的に表現できる。また、このような話し合いそのものが、教師の指導力向上につながった点も注目すべきだろう。
「今まで教えていた単元内容の相互関係を改めて整理することができましたし、その単元を教える上で本当に重要な部分を再確認できたと思います。その結果、どうしても生徒に理解させたい部分に思い切って授業時間を割くといった判断が、教科の共通理解の下に容易にできるようになりました」(石塚先生)
更に、英語担当の近藤康弘先生は「単元の相互関係を整理した効果は、授業以外の場所でも発揮されている」と語る。
「私は面談でもシラバスを使っていますが、例えば、ある文法が分からない生徒がいた場合、従来はその原因がどこにあるのか、生徒とじっくり話し合って考えるしかありませんでした。しかし、シラバスがあれば、つまずきの原因がどこにあるのかを端的に示すことができます。また、教師はもちろん、生徒が自分の力で分からない箇所を探し出す際にもシラバスは有効です。全学年のシラバスが揃う05年度に向けては、シラバスの到達度目標一つひとつにチェックボックスを設けて、生徒が自分自身の力でつまずきの原因を見つけ出せるように工夫する予定です」 |
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