ベネッセ教育総合研究所
特集 学校組織の機能活性化
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合意形成を促す仕掛けを検証する part2

 Part1では導入期指導を例に、実践とその評価を一体化することが取り組みを形骸化させないポイントであることを述べてきた。だが、いかに指導プロセスをシステム化しても、それを実践する教師の参加意識が低かったり、分掌間・教科間のコミュニケーションが取れていなかったりすれば、校内コンセンサスが得られず、取り組みの成果は上がらない。
 Part2では、多くの教師の参加意識を高めると共に、校内の合意を形成するために、島原高校がどのような工夫をしているのかを見ていきたい。


「質問の奨励」で教師の熱意を引き出す
 近年、島原高校のテーマの一つに「質問の奨励」がある。生徒の学力伸長に質問が欠かせないのは言うまでもないが、島原高校の特徴的な点は、「いつでも、どこでも、誰にでも」を合言葉に、生徒に質問をさせるよう意図的に仕向けることで、すべての教師が積極的に指導に関わる雰囲気をつくり出している点にある。生徒は自分が質問をしたいと思う教師に聞きに行くもの。特定の教師に質問が集中すれば、他の教師のライバル心にも火が付くというわけだ。「生徒の学力定着はもちろん、生徒の質問を増やすことで、教師の奮起を促す狙いもある」と橋本先生は指摘する。
 質問の習慣を付けさせる最初の場は、導入期の雲仙合宿研修だ。ここで生徒に積極的に質問をする姿勢を植え付けていると言う。
 「生徒が質問をしてきた時、先生方に徹底してもらっていることは『必ず生徒が分かるまで教える』ということです。質問をしても曖昧な対応をされたり、疑問が解けなかったりすれば、生徒は積極的に質問しようという気は起きませんからね。導入期の段階でしっかりと『質問の効用』を生徒に実感させることで、生徒はその後も日常的に質問を投げ掛けてくるようになるのです」(橋本先生)
 実際、島原高校では職員室や廊下の各所で、生徒が教師を捕まえて質問をしている風景が見られる。数学や英語など質問の多い教科では、定期考査前に行列ができることも珍しくない。こうした生徒の熱意に応えるため、校舎改修の際に職員室の横の壁を取り払い、「質問待ち」のスペースをつくったほどだ。
 教師が熱心に生徒の質問に答えることで、生徒は質問の効用に気付き、積極的に教師に質問を投げ掛ける。この熱意に触発され、教師は更に指導に力を入れる―。こうした好循環が生まれると、自然と学校全体が活気付いてくる。
 「質問が活発化すると、生徒は自然と挨拶もきちんとできるようになります。生徒と教師の距離が近付くので、教科以外の指導もすんなり受け入れてくれるようになり、学校の求心力も高まるのだと思います」(相川先生)
 新課程施行以後、多くの高校で塾通いの生徒が増えたことが指摘されるが、島原高校では入学時こそ多いものの、学年を追うごとに塾に通う生徒は減少するという。教師が生徒の熱意にしっかりと応えることで、「学校が一番」ということを生徒に実感させているのである。


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