ベネッセ教育総合研究所
大学改革の行方 大学入試改革の現状と展望
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各大学で見られる要求学力の変化
 リベラルアーツ教育が盛んなアメリカでは、例えば学生が身に付けるべき力を「革新的な創造力」、「創造的な問題解決力」「卓越したコミュニケーション力」のように定義して、それらの獲得プログラムを提供している。
 日本でもリベラルアーツ教育を重視して教養学部を大切にしてきた東京大では、いち早く教養教育改革に取り組み、「幅広い専門分野において通用するディシプリンやツールを獲得する」「総合的な判断力や柔軟な理解力を養う」「深い問題意識と動機づけを修得する」という到達目標の下に、教養学部のカリキュラムの見直しを行っている。
 また慶應義塾大では、「専門教育・大学院教育との関わりを視野に入れた教育制度を研究し、社会のリーダーの資質を醸成すること」を目標の一つにしている。
 いずれも現代社会の要請に応え、大学院において先端研究を行う研究者の養成や、専門職大学院において高度専門職業人を養成することを視野に入れたリベラルアーツ教育ということであり、当然そのような大学院への接続をよりスムーズなものにする。そしてこれは、02年に中央教育審議会が打ち出した「社会の激しい変化に対応し得る統合された知の基盤」を養うということが前提になっていなければ実現は難しい。東京大の教養学部が文系で必修にしている「方法論基礎」や、文理共に選択で学ぶ「総合科目」(※3)などは、それを実現するために必要な科目と言えるであろう。
※3 「方法論基礎」「総合科目」:東大教養学部(2年間)では、最初の1年半は2科6類に分かれ前期課程科目 (基礎科目・総合科目・主題科目) を学ぶ。このうち「方法論基礎」は文系必須の基礎科目で、「総合科目」は文理共通の選択科目。前者は言わば知の技法を学ぶ科目であり、後者は「思想・芸術」「国際・地域」「社会・制度」「人間・環境」「物質・生命」「数理・情報」の6系列で分野横断型など学問の広がりや奥行きを修得させる科目である。
 大学入試問題の要求学力の変化は、こうした大学の教養教育改革の動きを反映し始めていると考えることができる。大学が学部教育で先端分野の研究者や高度職業人の育成を視野に入れた教育制度を踏まえ、これからの入学者選抜を行う場合、次の2点が予測される。すなわち、
(1)総合的な判断力・問題解決能力のある学生を取る方向
(2)専門基礎教育を考えれば先端学問に関連した学力や資質・能力のある学生を取る方向

へ向かうという点である。
 恐らく06年度の新課程入試以降、国大協が目指す08年度入試改革に向けて、入試の変化は更に進むと考えられる。各大学の教育目標や育成する人材像も更に明確になり、それが入試に反映されるからである。その時、各大学から一般入試、推薦入試、AO入試で、それぞれの狙いがはっきり示されることを期待したい。

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