ベネッセ教育総合研究所
指導変革の軌跡 静岡県立・榛原(はいばら)高校「広報活動」
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地域の協力なくしては実現しなかった通学バスの運行
 さて、榛原高校にとって02年度は、もう一つ大きな事業が実を結んだ年でもある。それは通学バスの運行決定だ。
 東海道線から10数キロも離れているため、榛原町周辺には通学に使える鉄道がなく、多くの生徒にとって唯一の交通手段が路線バスだった。ところが近年、赤字を理由とした便数の削減や、路線自体の廃止が相次いでいた。どんなに榛原高校の魅力を地域にアピールしたとしても、通学の足を奪われてしまっては、生徒たちは集まってこない。そんな中で浮かび上がってきたのが、通学バスを運行するというアイディアだったのだ。
 02年6月、榛原高校は通学バスの運行を考えるプロジェクトチームを校内に設置する。そして保護者へのニーズ調査により、全生徒の3分の1が通学バス利用の意向があることを把握した。9月には、PTA、後援会、同窓会を母体とした通学互助会が発足。だが、壁にぶち当たったのはここからだった。
 「バス会社から、運行費として年間4~5000万円が必要になるという試算が出たのです。生徒たちから集められる交通費は、その半分が限度。もし教員だけで事業に取り組んでいたとしたら、この時点で諦めていたでしょうね」(鴻野先生)
 心強かったのは、PTAや後援会などの地域の人たちの存在だ。自営業者として、企業との価格交渉について豊富な経験を持っている人が少なくなかった。彼らはバス会社数社と粘り強く交渉を重ねながら、なんと03年4月から独立採算での運行を実現したのだ。
 「地域の方から全面的なサポートが得られたのは、榛高が変わろうとしているという雰囲気を感じ取ってくださったからだと思います。今、通学バスは5ルートで運行されていますが、そのうち3ルートは既に路線バスが廃止されている所なので、生徒は通学バスなくしては本校に通うことができません。通学バスが、生徒獲得に大きな力を発揮していますね」(鈴木均校長)
 地域からの信頼を失った榛原高校は、一時は大幅な志願者の減少に直面した。だが学校改革を成し遂げ、学校の情報を積極的に発信することで、再び地域からの信頼を取り戻した。そして現在榛原高校は、通学バスに代表されるように地域のサポートを得ながら、更なる教育活動を展開しつつある。
 ちなみに03年度以降、榛原高校の志願者数は大きく増加している(図2)。特に2年連続の定員割れを起こした理数科は、03年度、04年度入試では、2倍以上の志願倍率を記録した。
図2


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