入学直後からしばらくは、前述の課題1、2のような事柄を見据えた指導が学校の指導の中心を占める場合が多い。しかし、そこから学習方法・スタイルを見直し、自ら学習課題を見つけて学ぶ、言わば「自律・探究型」の学習が行える部分を、2年次後半を迎える頃までに少しでも増やしておけるよう、指導をシフトできるかどうかに、導入期からの指導効果が持続するかどうかがかかっている。
例えば自律・探究型の学習において課題に取り組む意味は、「自分の分からないところが明らかになる」ことである。そして、必要に応じて、補完的または発展的な学習を自ら計画し実行することで、学力が補強され、更に学んだことが身に付いていく。しかし、課題をこなせなくなった段階で放置しておくと、「自分が分からないところはどこか」が分からなくなり、やがて授業からもドロップアウトしていくといった状況が、1年次後半から顕在化しているようだ。
もちろん、自律・探究型の学習へ、生徒全員がすぐ転換できるわけではない。多くの学校で試行錯誤がなされているが、言わば「与える・強制」の学習の中に、自律・探究型の学習につながる部分を徐々に盛り込んでいく指導を行っている場合が多い。そうした取り組みの具体例として、例えば、次のようなアプローチがあるだろう。
(1)場の提供:「失敗に学び、つまずきを解消する」場として、テスト結果返却後に弱点補強のための目的が明示された講座を設けるなど
(2)チェックツールの提供:シラバスなど、どこが分かっていないか、自分の「つまずき」を理解するためのツールを与えるなど
(3)教材の工夫:空欄補充型から記述中心型へ、「自主的に」する部分を課題の中で増やし、全員がやりきる基礎課題と、希望者向けのチャレンジ課題を組み合わせるなど、与え方も工夫する
なお、以上のような一連の指導が機能するには、活動の目的・背景を学校内で共有して指導に当たることが不可欠である。分掌間の連携は言うまでもないが、特に導入期は新任の教師なども多いため、基本的な個々の取り組みの「目的」から改めて共有し直すことが重要だ。
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