ベネッセ教育総合研究所
特集 導入期の集団づくり
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上級生からの波及効果を継続的に発揮させる工夫
 上級生による新入生の感化は、オリエンテーション合宿が終わった後にも指導の随所に取り入れられている。その最も大きな仕掛けの一つが、豊田西高校の学校祭である『西祭(さいさい)』である。以前はこの一大イベントを9~10月に実施していたが、15年前から6月にその実施を繰り上げた。進路指導主事の松田昌浩先生は、その狙いを次のように語る。
 「『西祭』を1学期にした狙いは、3年生の受験に向けた学習への切り替えを容易にすることと、新入生に早く『西高生』としての意識を持たせることにあります。『西祭』では、学年の枠を取り払い、縦割りに1~3年生まで混合した『団』を九つ設け、各団で演劇、応援、マスコット、展示を実施します。その準備の過程で上級生と交流することが、1年生の集団形成に大きな意味を持つんです」
 上級生との交流を新入生の感化に生かす試みは、それだけにとどまらない。豊田西高校がキャリア教育の一環として実施している「豊西総合大学」(大学からの出張講座)を、学年枠を越えた班編成で受講させるなど、イベント性の高い取り組みはもちろん、日常の学校生活においてもその狙いは徹底されている。進路指導室に通じる廊下の壁には、生徒の目につきやすいよう、卒業生からの応援メッセージがびっしりと貼られている。また、1、2年生が出入りすることを狙って、進路学習などの資料は自習室に置き、3年生が受験勉強に打ち込む姿を下級生に自然に印象付けるといった細かな仕掛けも工夫されている。
 「我々教師が口で百回説明するよりも、上級生の姿を一目見せることのほうが生徒の感化につながることは多々あります。日常生活の中にできるだけそうした機会を設けることで、1、2年後を思い描きながら学校生活を送るよう促していきます。だからこそ、現行課程への移行に際しても、こうしたプラスの面を生かす観点から、学校が一体となって実施する学校行事は一切削減しませんでした」(寺町教頭)


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