ベネッセ教育総合研究所
特集 導入期の集団づくり
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学年裁量権の大きさが柔軟な学校改革の原動力
 以上、豊田西高校の導入期指導のポイントを見てきたが、合宿や学校行事、面談などの連携で効果的な指導を実現していることが分かるだろう。
 だが、ここまでで取り上げたのは、豊田西高校の取り組みの基本的なフレームワークに過ぎない。豊田西高校では、学年裁量の中で、各学年の創意工夫によってその細部の仕掛けが異なる部分も多いためだ。一見、学校としての歩調統一が弱いように聞こえるかも知れないが、実はこの体制は理由があってのことなのだという。
 「20年ほど前からの改革が実り、『進学校』への脱皮に成功した本校ですが、今後は積極的に難関大へのチャレンジを支援する指導も必要になってくると考えています。導入期指導においても、生徒の実態を見極めながら今まで以上にチャレンジ精神を養う取り組みが必要になるでしょう。そこで、数年前から本校では、一度確立した3年間の指導プランを一度解体し、学校としてどうしても外せない部分以外は、学年の創意工夫に応じて積極的にアレンジしていく方針に改めました」(松田先生)
 言わば意図的に指導スタイルの多様化を認めたわけだが、なし崩し的にこのような方針に転換しては、かえって逆効果になりかねない。そこで豊田西高校では、30代の若手教師約10名を中心とする「きらめく会(99年~01年)」「新研究会(02年~03年)」などの改革検討組織を必要に応じて設け、学校として何を行うべきか、全体的な視野から議論できる体制を整えている。
 「これらの会議を担うのは、主として担任を持つ若手教師です。分掌や学年の枠に捕らわれずに柔軟に改革案を討議することを目的に設置されています。名称は年度によって変わりますが、活動が一区切りついた時点で学校の指導改善に向けた報告書を作成し、職員会議などで発表します。実際に改革につながった案もあり、例えば、オリエンテーション合宿へのグループエンカウンターの導入は、この会議で提案され、03年度から実施されたものです」(久田先生)
 つまり、議論の土台となる共通の改革案を提案する組織があることで、学年裁量と学校としての指導の統一性を両立しているわけだ。また、学年裁量を認めるのと並行して、学年間の情報共有を強化しているのも豊田西高校の特徴だ。各学年が行った模擬試験の結果をはじめ、指導のポイントになるような情報を職員会議などで報告するのは当たり前だという。
 最後に松田先生は今後の豊田西高校の方針を次のように語ってくれた。
 「各学年が創意工夫を凝らしていくことで、導入期指導についても今後様々な指導プランが出てくると思います。しばらくは、様々な指導を試す期間と位置付け、新たな『西高の指導ストーリー』を模索していくことが必要だと考えています。その意味で、もう数年は積極的な『過渡期』と見て、新たな指導の形を探っていきたいと考えています」
 一度確立した進路指導ストーリーに甘んじることなく、更なる指導改革を進める豊田西高校。その姿は、導入期指導の壁を感じている他校にとっても、参考になる部分が多いのではないだろうか。
図3


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