筑波大大学院・人間総合科学研究科教授
渡辺三枝子
Watanabe Mieko
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特集3 導入期の集団づくり
インタビュー
自分の居場所を生徒が自覚できる指導を
自発的に行動できない生徒の増加は、導入期指導を実践する上で大きな問題の一つである。
とりわけ「言われたことはこなすが、自ら行動を起こそうとはしない」生徒の心理状態をどう変えていくか、向上心をどのように高めていくかは、重要なテーマだ。「前向きさ」を育むために行うべき導入期指導とは、一体どのようなものなのか。青年期の心理に詳しい、筑波大の渡辺三枝子教授にお話をうかがった。
生徒一人ひとりのプロフィールをしっかり把握する
現在でも、多くの高校では導入期指導の一環として、学習合宿やきめ細かな宿題提示、規則正しい生活習慣確立のための様々な試みがなされている。しかし、中にはその効果が一時の「強制」にとどまってしまい、根本的に生徒の自発的行動を促すに至っていないという声も聞く。この点について渡辺教授は、これまで以上に生徒の心理状態を把握する必要性を指摘する。
「同じ高校1年という枠組みの中にいても、生徒は千差万別です。出身中学でどのような指導を受けてきたのか、家庭環境はどうだったのかなどによって、状況は全く変わります。例えば、同じ入試を経験しても、達成感を得た生徒もいるでしょうし、反対に劣等感を抱いた生徒もいるはずです。生徒一人ひとりがどんな成育の背景を持ち、どんな経験をして入学してきたか、これから始まる高校生活をどのように捉えているのか。これら生徒個々のプロフィールを把握しなければ、その後の学力向上や人間的成長を促していくのは難しいでしょう。教師は、学校側が想定する『高校1年生』の姿を生徒にもしっかりと意識させることに加え、個人の発達レベルや心理的状況に合わせた指導を今以上に重視して、生徒を導いていく必要があります」
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