単位制導入と同時にスタートした取り組みの一つが、埼玉大と連携した大学での講義聴講である。浦和高校のそれは、大学生が受けている講義にそのまま高校生が参加するスタイルのものであり、参加する生徒には半年または通年の全講義聴講が義務付けられている。いわゆる単発イベント型の体験授業とは全く意味が異なるのだ。
だが、全く高校生向けにはなっていない大学の授業に出て、生徒たちは内容を理解できるのだろうか。この点に関して、杤原先生は次のように考えている。
「この取り組みの狙いは、あくまでも大学における学びのレベルの高さを生徒に体感させることにあります。したがって、参加する生徒にも『大学の講義をすべて理解することが目的ではない。内容の理解は目標であり、理解しようと努力することに意義がある』と言い聞かせています。実際、高校レベルを超えた数学を駆使する経済学の講義では『ほとんど分からなかった』という生徒もいます。しかし、そうした壁に突き当たり、学問を学ぶ意味を生徒が自問自答することこそ、この取り組みの狙いなんです」
事実、大学に足を運んだ生徒の多くは、高校で受ける授業の意味に気が付く。「今高校で学んでいる内容が、どのように大学につながっていくのかが分かった」「文型の類型にいるが、経済学部に進む以上は数学も必要だ」あるいは「理系に進もうと考えていたが、英語ができないことにはレポート一本すら書けない」など、将来を見越した上で、今自分が学ぶべきことの意義に気が付く者も多い。
「この取り組みの有効性については、高校、大学共に大きな手応えをつかんだと思います。目下の悩みは、週5日制の影響で、一部の授業を7限を使って実施する必要があるため、大学の講義を受講しにくくなっていることですが、この点については今後対策を考えていかなければなりませんね」(長谷川先生)
更に浦和高校では、埼玉大と協力した成功体験を土台に、02年度からは東京工業大のサテライト授業(※)を受講できる環境が校内に整えられた。
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