ベネッセ教育総合研究所
VIEW'S REPORT 未来を模索する単位制高校
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高大連携事業で進学意欲を喚起
 一方、このような取り組みを経て、進学意欲を持った生徒に対しては、その意欲を学習行動に転換させるべく、「近未来ガイダンス」と呼ばれる公開講座が用意されている。これは、大学教授や企業人など各分野の第一線で活躍する人材を集めて行われるもので、「数年後の自分を思い描くこと」を明確にうたっている。
 「本校は校外と連携することにも力を入れています。『近未来ガイダンス』の開講数は04年度で70講座に上りますが、進路が明確な生徒にとっては、希望進路についてより深く知る機会に、進路で悩んでいる生徒には2種類以上の講座を受講することで、進路希望を考える機会にもなっています」
 校外と連携した博多青松高校の取り組みはこれだけではない。近隣の大学と提携し、生徒が聴講生として大学の授業を履修できる「アドバンスド・スタディ」、大学等の公開講座への参加を卒業単位として認定する制度なども順次整えられている。
 「高校生でありながら大学の授業を受講することで生徒が得られるものは多々あります。単位制のメリットを最大限生かし、生徒に効果的な刺激を与えられる取り組みを今後とも追求していきたいと考えています」
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進路検討会を通した充実した出口指導
 意識啓発やキャリア支援を中心とした博多青松高校の教育理念は、進路検討会においても徹底されている。一般的に進路検討会というと、多くの高校では、生徒の志望や学力を検討し、合格安全圏大やチャレンジ圏大を判定するための会議を意味する。しかし、博多青松高校のそれは、別の側面から生徒の進路実現を支援するための会議であるようだ。
 「本校の卒業予定者に対する進路検討会議とは、生徒の志望状況を担任全員から報告し、共有した上で、生徒の志望に対して『どのような情報を与えたらよいのか』を検討する会議を指します」
 とは言え、多様な進路希望を持つ博多青松高校の生徒たち。提供する情報も多岐に渡る。そのため、細かな情報収集は欠かせないという。
 「情報の多くは教師自身が足で稼ぎますし、本校の卒業生からも後輩のためにフィードバックがなされます。その結果、一般的に出回っている情報誌からでは分からない情報や、判断がつきにくい情報も得られるのです。例えば、この資格を取得するためにはこの大学が最も望ましい、厳しい状況下にある大学・短大群でも、この大学は教育が充実していて生き残る可能性が高いなど、詳細な情報と判断基準を校内に蓄えています。本校の教師には、生徒の真のニーズをつかむ『生徒理解のプロ』であるのと同時に、生徒の意欲・関心に合った内外の情報を与えられる『進路情報のプロ』であることが求めらます」
 以上のように博多青松高校では、生徒の自発性を重んじた指導が徹底されている。このような指導方針は、進学実績のみならず、生徒の意識啓発の面でも大きな成果を上げているようだ。
 「大学に進学した生徒たちは例外なく、『大学の授業中に平気で私語をする学生がいるのが大変不思議だ』ということを言います。本当に行きたい大学に行く、学びたい学問が明確になって卒業している、何よりの証だろうと嬉しく思います」
 多様な価値観を持つ生徒に対応するために、「単位制高校が持つ可能性」を追求する博多青松高校の取り組みには、単位制高校として「あるべき姿」の一つが垣間見えている。
 


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