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福岡県立博多青松高校
宮原清
Miyahara Kiyoshi
教職歴19年目。同校に赴任して8年目。進路指導主事。日本史担当。「心の導線に灯をともす教育を!」
博多青松高校…福岡県初の単位制高校として1997年に開校。定時制に普通科(1学年240名)、情報科学科(1学年120名)を設置する他、通信制課程も設置する。自律・創造・敬愛を校訓に掲げ、近年は九州大をはじめとする難関大にも合格者が輩出している。 |
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事例2
福岡県立博多青松高校
単位制の効果を最大限引き出す
キャリア教育を追求
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完全な自由選択でカリキュラムを設計 |
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福岡県立博多青松高校は、同県初の単位制高校として97年に開校した三部制(午前・午後・夜間)の高校である。その形態からも明らかなように、博多青松高校の生徒層には、社会人や高校中退者が含まれているが、近年は4年制大学や専門学校への進学者数を急伸させ、大きな注目を集めている。
だが、博多青松高校では決して進学重点型のカリキュラム編成を行っているわけではない。むしろ博多青松高校は「生徒一人ひとりがオリジナルの時間割を作成する」という単位制の理念に極めて忠実な学校運営を行っているのだ。進路指導主事を務める宮原清先生は、「『選択制』『希望制』『弾力性』こそ本校の教育方針のキーワード」と言い切る。
「本校の生徒たちは、卒業までのカリキュラムを、教師のサポートを受けつつ、完全に自らの手で決めていきます。選択制を前提とした教育活動とは、単に生徒のモチベーションの低下を防止するシステムではありません。むしろ、選択という行動を通して生徒の意欲・やる気を顕在化させるシステムだと捉えています。本校の場合も、入学当初は必ずしも目的意識が明確でない生徒がいますが、受講科目を自ら選択していく過程で、主体的に人生を歩む姿勢を身に付けていくのです」
では、主体的に将来を考える姿勢を生徒が身に付け、自由選択型のカリキュラムを機能させるために、博多青松高校ではどのような取り組みが行われているのだろうか。以下でそのポイントを見てみよう。 |
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教師がマンツーマンでカリキュラム作成を支援 |
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完全な自己選択制のカリキュラムを機能させるために求められるのは、何よりも生徒一人ひとりが明確な進路意識を自覚するよう促すことである。博多青松高校では入学前の「合格者説明会」で意識付けを行う他、入学直後に行われる受講ガイダンスを利用して、生徒一人ひとりに対し、教師がマンツーマンでアドバイスを与えながらカリキュラムを完成させていく。多様な生徒層を反映し、生徒の就学目的は資格取得を目指すものから、大学進学を目指すものまで多様である。多くの要望に対処しなければならないだけに、相談を受ける教師の負担も並大抵ではないが、博多青松高校の教師たちは、決して教師側から進路を決め付けるようなことは行わないという。
「生徒に教師から一方的な進路観を与えようとしても効果は望めません。むしろ、この時点では生徒の個性がどこにあるのか、真摯に考えることが大切だと思います。高校では学習できない学問的な内容を更に深く学びたい、あるいは、高度な資格を取得したいなど、進路意識は考えるうちに徐々に芽生えてくるものです」
このようなコンセプトに照らし、博多青松高校では200を超える講座が準備されている。同一科目でも入門レベルのものから大学進学レベルのものまで用意されているため、これらを一つひとつ「選ぶ」という行為そのものが、自らの進路を考えることにもつながるわけだ。
また、生徒と教師が共にキャリア設計を行う作業が、在学中を通して継続されるのも博多青松高校の特徴だ。進路適性検査や校外模試、年度ごとの受講希望調査などの機会を捕らえて、じっくり生徒とHR担任、教科担当者、ガイダンス部職員など多くの教師と進路について話し合う「キャリア・カウンセリング」の時間が確保されている。 |
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