ベネッセ教育総合研究所
シラバスの活用 シラバス活用による学校活性化への視点
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提言 「生徒の成長サイクル」に合わせたシラバス作りを
 以上の通り、04年度取材校の実践からシラバス活用により学校活性化を図るためのポイントを整理してきた。シラバス活用の本質とは、学校の抱える本質的課題を見極め、共有化した上で進路シラバス、教科シラバス、保護者用シラバスなど、それぞれを連関させ、生徒の成長過程における課題に沿って教育活動の体系化を図ることである。
 例えば教科シラバスは、教育課程の編成と授業実践を接続させるものであり、教育課程の編成に当たり、SI(スクールアイデンティティ)を明確にし、それに基づいた教育目標及び育てたい生徒像を具体的な教科指導実践プランに落とし込んだものである。その意味で、シラバス策定に当たって、本来求めるべき機能・背景を校内で再度整理する必要があるだろう。
 そこで、本誌が先進校の取り組みを踏まえ、更にこれからのシラバスに求められる視点を整理・提言してみたい(図4)。
図4
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そのポイントとして、
(1)生徒の成長サイクルに柔軟に合わせた時期区分を意識した設計
(2)教科指導と進路指導(キャリア教育)のリンク
(3)いつまでに何をすべきか、実行レベルの表記
などが重要になってくると思われる。
 実際に「教科シラバス」は、学習意欲を支える進路観育成を目指す「進路シラバス」と当然連動すべきものである。また、学校と家庭との連携を考えた場合、「保護者用シラバス」を教科、進路シラバスと連動させるべきことは、実践事例からも見えてきた。生徒の「成長サイクル」を見極め「学習サイクル」と「進路指導サイクル」、更に「保護者への情報提供サイクル」を踏まえ、学校として最も効果的な検証のタイミングを検討することも重要な視点である。例えば、「導入期」から「中だるみ」を迎え始める1年後半には、高校の基盤形成である「学習習慣」が身に付いたのかを検証したり、将来を踏まえた「職業研究」「学部・学科研究」などの「進路学習」がどのように身に付いたのか、それぞれのシラバスを基に「総括」するのである。
 「総括」のタイミングは、各高校にとっての生徒の成長サイクルに合致させていけば、常に学年末、学期末のタイミングだけでは十分ではないはずだ。図4では導入期指導を振り返る「1学年7月」、そして高校生から受験生への転換期を迎える「2学年10月」そして、将来ビジョンを確立し始める「2学年3月」などと区分してみた。
 このように生徒の成長サイクルを見極め、上記のような総括を可能にするには、「学年間の連携」「各分掌間の連携」が重要になるだろう。
 教育目標達成のためには、教員間の連携と学校全体の中で指導のポイントごとに生徒の実態を見極めたシラバスの「重点化」「機能化」「共有化」が必要になってくる。今こそ、高校を取り巻く大きな環境変化の中、教育活動全体の設計書作りが求められているのではないだろうか。


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