群馬大工学部教授
辻幸和
Tsuji Yukikazu
1945年生まれ。東京大大学院工学系研究科博士課程修了。群馬大助教授等を経て現職。前群馬大評議員、地域共同研究センター長。
栃木県立佐野高校
篠山秀志
Shinoyama Hideshi
教職歴21年目。同校に赴任して6年目。1学年主任。理科担当。「将来を見据えた上で、今の自分を磨ける生徒を育てたい」
群馬県立前橋高校
高橋俊雄
Shinoyama Hideshi
教職歴26年目。同校に赴任して10年目。進路指導主事。理科担当。「多くの人に信頼されるリーダーとなるよう、資質を磨いてほしい」
群馬県立太田高校
荒木隆
Araki Takashi
教職歴20年目。同校に赴任して9年目。数学担当。「当たり前のことの積み重ねが大きな成果の源だと生徒に伝えています」
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群馬大「高大連携会議」
実践事例
高大連携会議による包括的な議論が
「点から面」の連携を促す
高大双方の呼び掛けで立ち上げられた「高大連携会議」
大学教授による出張講義や、高校生の講義体験は、今やすっかり全国的に定着した観がある。群馬大は国立大でこうした事業にいち早く着目すると共に、その広域展開を率先して進めてきた。01年には、大学側から群馬県教委に申し入れる形で、全県の高校生を対象とした公開授業や出前授業を開始。それまで個々の高校との提携による「点と点」にとどまっていた高大の接点を、一気に地域という「面」に拡大した。この試みは年々参加校の増加となって結実し、生徒の進学意欲の向上や、教員の相互交流等に大きな成果を上げるようになってきている。
更に群馬大では今、高大の接続をより強固なものとする、あるプロジェクトが盛り上がりを見せている。高校教員と大学教員が、直接入試問題や大学の導入教育の在り方を議論する、「
高大連携会議
」がそれだ。双方が開催を呼び掛ける形でスタートしたこのプロジェクトは、大学のオフィシャルな会議体の一つとして明確に位置付けられている。つまり、これまではヒアリングなどで断片的にしか伝えられなかった高校側からの意見が、「地域の高校現場の意見」として集約された上で、オフィシャルに大学内にフィードバックできるルートが確立したわけだ。そのため、参加する高校教員の問題意識は高く、地元の群馬県に加え、群馬大に多くの生徒が進学する隣県の栃木県からも多数の教員が参加している。会議の立ち上げに中心的な役割を果たした群馬大工学部の辻幸和教授は、そこに込めた思いを次のように語る。
「新入生の学習意欲や学力の低下といった問題には、本学でも多くの教員が頭を痛めています。そこで本学では初年次教育の改革や高校への出前授業、オープンキャンパスなどの取り組みを行ってきたわけですが、それで十分な対応ができているかと言えばそうではありません。例えば工学部のケースでは、毎年入学者の約5%程度が、初年次教育の段階でドロップアウトしているのです。問題を根本から変えていくためには、高大双方が腹を割って、互いにできることや、相手に求めたいことを率直に話し合う場が必要だと感じていました」
一方、高校側には更に別の思惑もあったようだ。立ち上げ当初からのメンバーである栃木県立佐野高校の篠山秀志先生は、「入学時の学力要件の明確化」に意義を見いだしたいと語る。
「進路指導の経験がある地元の教師なら、戦前からの伝統を有する群馬大がしっかりした教育力を持つ大学であることは皆知っています。しかし、現在の入試難易ランキングにはそうした要素を盛り込むことは難しく、学力的にも多様な生徒が群馬大を志向するようになっています。相対比較に基づく『選別型』の入試が続く限り、こうした問題は解決されないでしょう。だからこそ、群馬大がどのような教育ビジョンに基づき、どのような資質を持った生徒を入試段階で必要としているのか、ある種の『最低学力要件』を明確にしていくことが大切です。それは、高大での教科内容の重複やミスマッチを防ぐのみならず、地域が長期的に、一定の人材輩出力を維持することにもつながるはずです」
では、実際にこのプロジェクトがどのような成果を上げつつあるのか。その発展の系譜を見てみよう。
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