ベネッセ教育総合研究所
特集 高大連携の未来形
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入試問題を切り口に高大が双方の思惑を語り合う
 「高大連携会議」の第一回会議は02年6月から9月にかけて実施された(概要は図1を参照)。
図1
開催に当たって工夫されたポイントの一つは、突っ込んだ議論を可能とすべく、焦点を「大学入試選抜」に絞った点だ。そのため、会議は一日で全部を終わらせるのではなく、二段構えの構成となった。すなわち、入試科目ごとに、参加者が5~7名程度の少人数に別れ、専門領域について語り合う「分科会」と、参加者が一同に会し、高大接続教育について大局的な議論を交わし合う「共同研究会」の二つの場を用意したのである。更に、責任ある議論を可能にすべく、大学側からは入試問題の作問経験のある教員が各分科会に参加した。これにより、入試問題の1題1題というレベルにまで突っ込んで、出題意図や難易度の妥当性を検証することが可能になった。
  「第一回会議は初回ということもあり、工学部のみの参加でしたが、個別学力試験で課される数学、物理、化学のいずれの教科・科目の分科会についても、大学側からは過去に作問経験のある教員が参加しました。作問意図がどこにあるのか、あるいは各出題の難易度が妥当なのか、といった点まで高大で議論するには当事者同士であることが大切です」(辻教授)
  このような工夫が奏効し、大学側が入試問題に込めたメッセージを明確に実感できた高校教師も多かったようだ。毎年20名前後の生徒を群馬大に送り出している群馬県立太田高校の荒木隆先生は、自らの専門である数学の分科会に参加した所感を次のように語る。
  「ここ10年程の群馬大の入試問題を見て、『全般的に易化傾向にあるな』と感じていました。しかし、ともすれば易しすぎるのではないかと思えるような部分もあって、『本当にこのレベルで入った生徒が大学教育に耐えられるのだろうか』という不安があったのも事実です。しかし、大学の先生方とお話をしている中で、『最低ラインを示す』という考え方で作問されていることが理解できました。また、『ここまでできていれば、あとは大学教育で責任を持って力を付ける』と、大学側が認識していることが分かり、群馬大を目指す生徒の学力をどのレベルまで高めていけばよいのかが明確になりました。進路指導、受験指導に生かせる内容の濃い話し合いになったと思います」
  化学の分科会に参加した群馬県立前橋高校の高橋俊雄先生も、同様に納得のいく成果を得られたようだ。
  「問題の1題1題に大学側が明確な出題意図を持っていたことにまず驚きましたね。例えば、02年度入試では、『解答方法が漠然としすぎているのではないか』と感じられるような記述式の問題があったのですが、大学側から『文章表現力も含めてしっかりと解答を見ている』とうかがいました。また、群馬大の化学の出題は有機分野のウエイトが比較的高いのですが、その点についても大学教育の内容を踏まえた上で出題されているとのことでした。入試問題に込められたメッセージ性の大切さを、改めて実感できました。本校の生徒のすべてが群馬大に進学するわけではないので一概には言えませんが、日々の授業の進め方や、到達目標をどこに置くのかを考える上で、参考になったと感じています」
  右に示した図2は数学分科会で交わされた議論の一部である。双方が本音レベルで議論を交わしたことがうかがえるであろう。
▼図2 第一回高大連携会議 数学分科会での議論(要約抜粋)
図2
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