ベネッセ教育総合研究所
指導変革の軌跡 長崎県立佐世保南高校「学力向上」
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導入期指導の充実で生徒の学習時間を確保
 04年度は佐世保南高校にとって、朝補習の質の向上と共に、もう一つ指導体制の充実が図られた年だ。
  それは、新入生に対する導入期指導体制の強化である。1年生の学年主任を務めている高比良裕先生は、次のように話す。
  「総合選抜制度が廃止になって感じるのは、不本意入学者が少なくなったためか、生徒たちが教師の指導をとても素直に受け入れてくれるようになったこと。ところが03年度新入生のときには、それを学力向上に結び付けることができなかったんですね。教師の言葉に素直に耳を傾けてはくれるのですが、かといって勉強はしてくれない。どうしてだろうかと考えたときに、そもそも高校生として求められる基本的な学習習慣が身に付いていないことが原因ではないかと推測したわけです。1年生のできるだけ早い時期に学習習慣を確立することがポイントになると考えました」
  そこで1年生の学年会では、入学式の翌日から2泊3日の宿泊研修を実施。従来の宿泊研修は仲間づくりを目的としたレクリエーション的な要素の強いものだったが、04年度は昼は集団行動、夜には2時間半の自学自習の時間を設けるというように、生活習慣と学習習慣の確立に重きを置いたものとなったのである(図2)。

図2
 更に、宿泊研修の翌週からは、校内実力テストを挟んで、二日間の学習オリエンテーションを開いた。これは国語、数学、英語の3教科について、それぞれ3時間の持ち時間の中で、予習・復習の方法、授業の受け方を生徒たちにレクチャーするというものだ。
  宿泊研修を通じて、生徒たちは「高校は勉強する場所だ」という意識を植え付けられる。また学習オリエンテーションによって、具体的な学習の方法を知ることができる。更に、この二つの取り組みを受け継ぎながら、学力向上に向けた働き掛けを、学年共通の方針の下で行っている。
  佐世保南高校では、高1生に求められる家庭学習時間を3時間と考え、それを確保させるために課題の出し方を工夫している。1年生の学年副主任の中野秀紀先生はこう話す。
  「学年会の申し合わせ事項として、国語、数学、英語の3教科で、1日3時間分に該当する課題を生徒に与えることを決めました。職員室にはホワイトボードを設置して、各教科の先生がどれぐらいの量の課題を生徒に与えているかを、確認できるようにしています(図3)。
▼図3 1学年課題提示ホワイトボード
図3
▲クリックすると拡大します。
教師はそれを見ながら、自分が担当する教科の課題の内容を考えるわけです。また、与えた課題は期限内に必ず提出させるということも徹底しています」
  中野先生は、前年に3年生の担任をしていたときに、靴下の服装違反をしてきた生徒に対して、学校指定の靴下を家まで取りに帰らせるといった指導をしていたという。これが効果てきめん。服装違反をする生徒はほとんどいなくなった。
  そこで中野先生は、課題の提出についてもこの手法を導入することを1年生の学年会で提案した。課題提出日にノートを忘れてきた生徒には、家まで取りに帰らせる。そして、課題が終わってない生徒に対しては、居残り学習をさせて必ず課題を仕上げさせるというものだ。こうした徹底した約束厳守の指導により、1年生の課題提出率は、ほぼ100%に近いという。
  「04年度からは、課題の出し方も工夫しています。従来は週末に課題を提示して、週明けに締切日を設けていたのですが、それでは生徒たちの週末の負担が大きすぎる。特に部活動のある生徒は大変です。そこで週の半ばに課題を出して、締切日も1週間後に設定するようにしました。これにより生徒は自分のペースで学習計画を立てることができます。またこうした課題の出し方をすることで、生徒の平日の家庭学習時間を確保することにもつながります」(高比良先生)


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