御影高校の「総合学習」は「課題研究講座」と題したものである。内容はいわゆる「テーマ学習」に類するもので、国際、社会、経済など全15講座が開講されている。
「全講座に共通する狙いは、自分で考える力と問題を発見・解決する力を身に付けることですが、これは数学の問題を解く場合にも通じる力です。各講座を受け持つ先生方に、数学との関わりを生徒に意図的に伝えるようお願いしています。特に私が受け持っている『経済』の講座では、経済現象の数値分析やグラフ化する方法など数学の統計の知識を盛り込むようにしています。また日々の授業の導入に関しては、経済の話題や歴史、生活の中で活用されていることなどから入るように心掛けています。例えば、放物線を扱うときは、自動車のライトの反射板の形を題材にしたり、三角関数を扱うときに、ユークリッドの寓話から説き起こしたりと、生徒が数学を身近に感じたりイメージしやすいように工夫しています」こうした意識付けによって生徒が「数学はこんなことにも関連しているのか」と興味を持ち始めるのである。
しかし、たとえ興味が高まったとしても、それがうまく成果に結び付かなければ、すぐに意気消沈してしまうのが今時の生徒。そこで赤松先生は、定期試験の出題にある工夫を加えている。
「例えば高校2年生段階で、多くの生徒が目指す大学レベルの入試問題を分解して出すんです。そのままでは解けませんが、解答を得るまでの考え方の段階を追う形で区切って出題するのがポイントです。数学が苦手な生徒でも何とか途中まではたどりつけます。これも『ここまでできた。じゃあ次は』と学習意欲を高める効果があります。更に解けた生徒は、『入試問題が解けた!』とやる気が出るんです」
また、赤松先生は、生徒がとっつきやすく、興味を持つような問題を積極的に出していく。「天使は常に真実を述べ、悪魔は常に嘘をつく…」という論理の問題を出題したり、生徒が数学を身近に感じられる内容の文章題を、必ず出題する。
「定期試験に取り組む生徒の姿勢が違いますね。試験が終わった後も生徒たちから試験問題について質問される機会も増えましたし、論理の問題などは、ある部活内で議論になったほどでした。定期試験を通しても数学はいろいろなものに関連していることを伝えたいと思っています」
御影高校の国公立大受験者数は年々増加し、05年度入試では約130名。これは前年度と比べて30名程度の増加を意味する。
「国公立大受験者が増えた要因の一つに、数学を諦めずに取り組む生徒が増えたことが挙げられます。嬉しいことに、私大文系クラスの生徒の中にも、数学で受験する生徒が出てきたんですよ」
現在実践している取り組みはどれもがまだ研究途中。早急に結果検証を行って、より良い指導に結び付けていきたいと話す赤松先生。その効果は既に表れ始めているようだ。 |