ベネッセ教育総合研究所
VIEW'S REPORT SELHiから英語教育の未来を探る
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アンケート結果から生徒向けシラバスを改善

 生徒に見通しを持って学習に向かわせる。そのために川越高校で大きな役割を果たしているのが生徒向けシラバスだ。城野博志先生は、シラバスを作成したときの工夫を次のように語る。
  「評価の観点などを詳細に示したものをそのまま渡すと、内容が細かすぎて生徒が混乱するのではないかと思いました。生徒が主体的に学習を進めるために活用するシラバスは、教師が教育目標や評価の観点を確認するためのものとは別に整備が必要です。本校では、個々の科目における生徒用シラバス作りから着手しました」
  例えば次ページ図1は、長岡久美先生が2年生の「英語理解」の授業で、生徒用に作成した単元シラバスだ。単元の目標に到達するために取り組むべきこと、予復習や授業の受け方、評価のポイントなどが具体的に書き込まれており、シラバスというよりは「学習の手引き」といった色合いが強い。

▼図1 生徒向けシラバス例(「英語理解」から抜粋)
図1
▲クリックすると拡大します。
 このシラバスの特徴は、生徒の学習プロセスをサポートするためのツールとして位置付けられている点だ。更にアンケートで得た生徒たちの意見を、シラバスの改善に結び付けているという。
  「私の担当科目では、学期に2回のペースでアンケートを実施しました。アンケートでは、ペアワーク等の様々な活動について、5段階で評価してもらいます。そして生徒から評価の高かった活動は継続、低かった活動は廃止か改善を検討し、次学期のシラバスを作るときに反映させていくわけです。もちろんアンケートの結果と、その結果を踏まえて授業をどのように変えていくかといった方針は、生徒たちに説明しました」(長岡先生)
  つまりアンケートを通して、生徒の意見が次の授業計画に反映される。それにより生徒は、授業の運営に参画しているという意識を持つことができるわけだ。「自立した学習者」を育てるための試みの一つと言ってよいだろう。
  ただしシラバスは、どんなに生徒の意思を反映しながら作成しても、それだけで授業への参画意識が高まるというものではない。丹賀祥二先生は次のように語る。
  「シラバスは、配付するだけでは、生徒は読み返してくれません。新しい単元に入るときには、生徒たちとシラバスを見て、学習目標や各活動の意図を確認すると共に、その日の活動目的を生徒たちに説明します。授業の冒頭に数分口頭で伝えるだけですが、学習の見通しを生徒に意識させるには、こうした確認が重要なんです」
  シラバスが自分で見通しを持って計画的に学びに向かう生徒を育てるのに有効なのに対して、自分に適した学習方法を身に付けさせるための手段として川越高校が重視しているのが、個別の学習指導だ。
  例えば、近藤泰城先生は、夏休み期間中に生徒に対して学習面での個別カウンセリングを実施した。
  「授業以外の場でどのような内容の学習をしているかを聞き、アドバイスを行いました。例えば『家でもリスニング学習をやっている』という生徒にその中身を聞くと、『CDと合わせてテキストを黙読している』と答えたりします。リスニングの力を伸ばすには、まずテキストを見ずに音声だけで大意をつかもうとする学習法が必要なのですが、教師が当然取り組んでいるだろうと思っていることをやっていない生徒は意外に多い。負荷は大きいのですが、生徒個々の学習内容を把握するのはとても重要です」(近藤先生)


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