ベネッセ教育総合研究所
大学改革の行方 教員養成改革の方向性
長谷川和弘
文部科学省高等教育局専門教育課
専門職大学院室長併教員養成企画室長
長谷川和弘
Hasegawa Kazuhiro
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Chapter 2
教員養成改革の諸相とその行方
モデル・コア・カリキュラムで学部教育はフィールド主義に
 01年11月の「在り方懇」報告書を契機に活発化した教員養成系大学・学部改革。では、具体的にどのような施策が打ち出されたのか。以下、主要な改革を見てみよう。
  「在り方懇」報告書で注目を集めた施策の一つが「モデル的な教員養成カリキュラム」の作成だ。医学部や歯学部におけるモデル・コア・カリキュラムや工学部におけるJABEE(本誌04年度2月号参照)などと同様に、教員養成の分野においても教育の質を確保するためのガイドラインを作成し、教員養成全体のレベルアップを図る、というのが作成の目的である。この報告を受けて、01年度に日本教育大学協会は研究プロジェクトを設置し、3年間をかけて「教員養成の『モデル・コア・カリキュラム』の提案」を作成した。本プロジェクトの推進役を務めた東京学芸大・岩田助教授は、モデル・コア・カリキュラムの意義を次のように述べる。
  「教員養成系学部の教育には、教育現場を実地に触れる経験が必要ですが、教育実習までに実際の現場に触れる機会は十分とは言えない場合が多い。また、たとえ現場に触れる機会が多くても、現場の課題を大学内部で行う研究に引き付けて省察する視点がなければ、現代的な教育問題を解決する力は身に付きません。そこでモデル・コア・カリキュラムでは、教育現場における学びとその省察を軸にし、理論と実践のつながりを持てるようにしたのです」
  実際、モデル・コア・カリキュラムの概念図(図3)を見ると、実習の事前・事後指導にあたる「教育実践体験」と、実際の実習である「教育フィールド研究」が交互に配置され、4年次の研究実習へとつながっていることが見て取れる。
図3
 また、このように大学と教育現場との連携が増える中で、大学教員と実習先の附属校などの教員間、大学教員間の連携が必要になるが、こうした『協働的な教育組織』を創り上げることも、モデル・コア・カリキュラム作成の狙いであるという。「教科や教職というセクショナリズムを越えて、皆で協力して学生を育てていこうという提案でもあるのです」と岩田助教授は強調する。
 各大学は、必ずしもモデル・コア・カリキュラムに準拠する義務はないが、北海道教育大、岡山大など、カリキュラム改訂を進める多くの教員養成系大学・学部で現在、フィールド重視の教育を取り入れつつあるという。

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