▲東北大大学院教育学研究科長/(社)国立大学協会 入試委員会専門委員
荒井 克弘
あらい・かつひろ
1947年東京都生まれ。広島大(旧)大学教育研究センター教授等を経て05年より東北大大学院教育学研究科長。00年まで大学入試センターに勤務。大学入試改革の専門家として、93年より旧国大協の第二常置委員会専門委員を務め、04年より(社)国立大学協会入試委員会専門委員。
■聞き手 ベネッセコーポレーション 教育情報部 課長
飯塚 信
後期日程の募集停止等の動きに象徴されるように、大学入試の在り様は、大きく変わろうとしている。 改革の背景にある各大学側のビジョン、そして、弊社が実施した「高大接続に関する調査」の結果から、 今後の入試改革の方向性を読み解いていく。
2004年の独立行政法人化をきっかけに、国立大の入試改革が猛烈な勢いで進んでいる。 だがその一方で、各大学の「各論」は見えても、改革全体を貫く「総論」が見えにくいという声も少なくない。 (社)国立大学協会委員で大学入試改革に詳しい荒井克弘教授に、率直な疑問点をぶつけてみた。
飯塚 高校では今、「国立大の入試はどうなるんだ?」ということが、非常に大きな関心事になっています。特に、2005年3月に京都大が07年度以降の入試で「後期日程廃止」を打ち出したことは、多きな反響を呼びました。 荒井 京都大の動きは、大学関係者の間でも「想定外」の動きだったと思います。確かに国立大学協会(以下、国大協)は、03年度の総会以降、分離・分割方式の柔軟な運用を認める方向で議論を進めていますが、その背景にあるのは、あくまでも「受験機会の複数化を前提とする」という考え方です。つまり、後期日程で募集人員を削減するなら、推薦入試やAO入試の拡充と合わせて実施すべきというのが本来の趣旨なんです。 飯塚 では、推薦入試やAO入試を実施せずに後期日程の廃止のみを行う京都大の動きは、ある種のイレギュラーだったのですか。 荒井 少なくとも「受験機会の複数化」という理念とは矛盾しますからね。そこで、05年の1月に、国大協は今回の件に対する「釈明」を京都大に求めたという経緯があります。これが圧力になったのかどうかは分かりませんが、後期日程の廃止をほのめかしていた東京大やその他の大学も、最近はそうした動きを積極的には示さなくなっています。 飯塚 国立大の入試は教育界に与える影響が極めて大きいですから、いくら各大学が独立行政法人化されたとは言え、ある程度歩調を合わせて動いていただいた方が、高校現場としては望ましいですね。 荒井 我々も同じ認識です。国大協の方針は、法的な拘束力を持つものではないですが、事実上のガイドラインとしては一定の影響力を持っています。また、04年度からの新国大協が、広く国立大学法人を巡る諸課題を解決する「シンクタンク」として、一定の機能を果たしていかねばならないと考えています。実際、今後の入試改革の方針に関しても「国大協の定めた指針を尊重する」というコンセンサスが、概ね得られつつあります。