大学改革の行方 「理科離れ」に挑む理学部の改革

岡田尚武

▲北海道大大学院理学研究科長・理学部長

岡田 尚武

Okada Hisatake

1944年富山県生まれ。北海道大大学院理学研究科博士課程修了。米ウッズホール海洋研究所研究員、山形大理学部助教授、同大理学部教授、北海道大大学院理学研究科教授等を経て現職。

山口佳三

▲北海道大大学院理学研究科教授

山口 佳三

Sakurai Hisakatsu

1951年大阪府生まれ。京都大大学院理学研究科博士課程修了。北海道大助教授を経て現職。

谷本盛光

▲新潟大理学部教授

谷本 盛光

Tanimoto Morimitsu

1949年愛媛県生まれ。広島大大学院理学研究科博士課程修了。愛媛大助教授、愛媛大教授等を経て現職。専門は物理学(素粒子論)。

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大学改革の行方
「理科離れ」に挑む理学部の改革

理学部は日本の科学技術の土台を支えている。その浮沈は、科学技術立国・日本の存亡をも左右する重大事だ。
しかし、現実には学部志願者数の減少、高校における履修履歴の多様化など、理学部を取り巻く環境は厳しい。その一方で、社会は理学部卒業生に、物理や化学、数学の枠を越えた幅広い教養を求めている。折しも改革に着手し始めた北海道大、新潟大の事例を通して、理学部改革の今を追う。

▼図 クリックすると拡大します。
図

「理科離れ」と共に進む理学部人気の低迷

 日本の若者の「理科離れ」が指摘されて久しい。理科的な事象に興味を示さない、あるいは理科の授業に対する理解度が低い生徒や学生が多く、社会人の中にも科学の基礎的な素養を持っていない者が増えていると言われる。
  文部科学省も事態を憂慮し、02年に「科学技術・理科大好きプラン」を策定、小中学校対象の「理科大好きモデル地域事業」をはじめ、中学校・高校を対象とした「サイエンス・パートナーシップ・プログラム(SPP)」や高校を対象とした「スーパーサイエンスハイスクール(SSH)」、文部科学省と環境省が連携して実施する「環境教育推進グリーンプラン」など数多くの施策を展開している(図1)。

▼図1

図1

出典:文部科学省ホームページより抜粋。

  しかし、こうした理科に興味・関心を持つ層の拡大を図る施策が行われる一方で、理学部の志願者数は減少の一途をたどっている。前ページの図は、理学部の入学志願者数と倍率の推移を示したものだが、志願者数は9万人を突破した95年度をピークとして、以後は減少傾向が続き、04年度には約7万人まで落ち込んでいる。
  こうした大学における理学部の不人気傾向は、なぜ起きているのだろうか。単に「理科嫌いが増えている」と言ってしまえばそれまでだが、その理由は、理学部の学部特性にもあるようだ。以下で、その原因を探ってみたい。


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