理学部は、農学や医学、工学といった応用科学の土台となる基礎的な理論を学ぶ学部である。日本の科学技術の発展を支える土台とも言えるのだが、基礎的な学問だけに、製品の開発に直接結び付く工学部や、資格が職業と結び付いている医学部や薬学部のような、具体的な成果や到達点が見えにくい学部でもある。
また、高校生の側から見ると、数学科や物理学科、化学科といった名称から、高校で学ぶ数学や物理、化学などのイメージから抜け出せず、大学の学問内容を誤解している場合も多い。特に、物理や化学を「暗記科目」として学習してきた生徒についてはなおさらだろう。
北海道大大学院理学研究科長・理学部長の岡田尚武教授は、「理学部で学ぶ内容を知らない学生は多い」と指摘する。
「本学では1年次に全学共通科目『北大の人と学問』を開講して、各学部の内容をオムニバス形式で紹介しているのですが、講義後に感想文を書かせると、理学部の印象が変わったという学生が少なくないんです。理学部では白衣を着て、実験ばかりやっていると思っているんですね。実際には、環境や天体、地震などの身近な事象を扱うことや、フィールドに出て実験や観察を行うことも少なくありません。大学側が積極的に理学の魅力を高校生に伝えていくことの重要性を感じましたね」
理学部の「アピール不足」については、新潟大理学部で教育改善検討委員会の委員長を務める谷本盛光教授も、同様の見解を示す。
「理学部の教員は研究者タイプが多いので、PR活動にはこれまであまり関心を払ってきませんでした。理学部に入ったらどんなことを学べるのか、卒業後はどんな就職先があるのかといったことをアピールして、理学部の存在感を高めていかなければならないと考えています」
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