大学改革の行方 「理科離れ」に挑む理学部の改革
VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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高校への積極アプローチで理学の魅力を伝える

 こうした背景から、近年、多くの大学ではパンフレットやWebサイトなどの各種媒体、オープンキャンパスやSSH(スーパーサイエンスハイスクール)における出前講義などの機会を利用して、高校生に理学の魅力を伝えるために様々な工夫を凝らしている。
  例えば、北海道大では理学部の学習・研究内容を平易な文章で紹介する冊子を制作し、大学見学に来た高校生に配布している(写真)。冊子の制作に関しては、紹介する学習内容や研究テーマなどは、すべて民間の業者が選び、学内の教員はほとんどタッチしなかった。どんなトピックが専門家以外の人の興味をそそるかを客観的な目でピックアップするためだ。

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▲ 北海道大・新潟大の高校生向け冊子(大きい方が北海道大)

  また、オープンユニバーシティや、札幌市内の公立高校への「出前講義」なども積極的に実施し、理学部の魅力をアピールしているという。その際、留意していることは、授業だけではなく、実際に見て、触れられる教材を用意していることだ。
  北海道大大学院理学研究科の山口佳三教授によると、数学科では次のように、高校生の興味・関心を引き出す工夫をしたという。
  「数学科では箱の中に効率よく玉を積み込む方法を、実際に模型を使いながら学ばせました。抽象的な数学という学問も、実物の模型を組み立てながら学ぶことで、より親しみやすくなると考えたからです。また、授業では高校の数学を題材にするのではなく、大学での学びにつながるようなトピックを紹介するようにしました。今、高校で学んでいることが、大学の研究でどのようにつながるのかまでを見せることが、数学科への期待を高めることにつながるのではないかと思います」
  一方、新潟大では夏休みを利用して、新潟駅前にあるサテライトキャンパスで、高校生向けの体験授業を実施した。科目は数学、物理、化学、生物の4つ。理学部への進学を視野に入れている県内の高校生を対象に、各科目10~20名を募集し、約1週間に渡って授業を行うのである。
  また、北海道大同様、SSHやSPPへの協力も積極的に推し進めている。「高校生とコンタクトを取れるものは何でもやろうというのが、現在の本学のスタンスです」と、谷本教授は強調する。

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▲ 数学専攻の出前講義(北海道大)で使用した模型

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