指導変革の軌跡 山形県立酒田東高校「低学年指導」

山形県立  酒田東高校

山形県立 酒田東高校

2005年に創立85周年を迎える。「知」「情」「意」「力」を教育目標のキーワードとして、文化の発展に貢献できる人材の育成を目指す。剣道部や新体操部、テニス部や陸上部などがインターハイに出場するなど文武両道にも力を入れている。

設立●1920年(大正9年)

形態●普通科

生徒数(1学年)●約240名

05年度進路実績(現役のみ)●国公立大には東京大・大阪大・北海道大各1名、東北大8名、千葉大4名、新潟大15名、山形大14名など98名が合格。私立大には明治大、早稲田大などに188名が合格。

住所●山形県酒田市亀ヶ崎1-3-60

電話●0234(22)1361

WEB PAGE●http://sakatahigashi-h.
ed.jp/


石寺 一秀

▲山形県立酒田東高校

石寺 一秀

Ishidera Kazuhide

教職歴28年目。酒田東高校に赴任して11年目。進路部長。「高い目標を達成し、自信と充実感を持って卒業してもらいたい」

石川 一男

▲山形県立酒田東高校

石川 一男

Ishikawa Kazuo

教職歴23年目。酒田東高校に赴任して6年目。2学年主任。「習慣と実行を合言葉に、充実した3年間を送ってもらいたい

佐藤 敏

▲山形県立酒田東高校

佐藤 敏

Sato Satoshi

教職歴14年目。酒田東高校に赴任して10年目。2学年進路担当。「大切なのはやる気、元気、根気。粘り強く物事に取り組んでほしい」

VIEW21[高校版] 新しい進路指導のパートナー
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指導変革の軌跡57
山形県立酒田東高校 「低学年指導」

合言葉は習慣と実行「新生・酒東」の挑戦

追い込みがきかない近年の生徒たち

 「今度の1年生は、何かすごいことを始めるらしいね」
  地域の人々のこんな声を、山形県立酒田東高校の教師たちが耳にするようになったのは、03年度末のことだった。
根も葉もない噂ではない。04年度入学生が入学するまでの3年間、酒田東高校教師たちは同窓会からの資金援助により全国の先進校の視察を重ね、学校改革のノウハウを蓄積してきた。そして、いよいよその成果を、具体的な形として実施しようとしていた矢先のことだったのである。殊更、地域への広報を積極的に行ったわけではない。それにもかかわらず、こうした噂が流れるところに、酒田東高校に対する地域の期待の大きさが表れていたと言えよう。
  もっとも、ここ数年来の酒田東高校の進学実績は、地域の期待を満足させるものではなかった。酒田東高校は、地区を代表する進学校として、例年110~130名の国公立大進学者が輩出してきた。変化が表れたのは6年ほど前からだ。教科学力バランスの悪い生徒が見られるようになり、部活動引退後、受験への切り替えがスムーズにできない生徒が増え始めた。そして、01年度には創立以来初の定員割れに…。
  こうした生徒たちの変化は、進学実績の低迷をもたらした。国公立大合格者数が100名を切るようになり、定員割れを起こした03年度卒業生に至っては90名を下回ったのだ。2学年主任の石川一男先生は当時を振り返って、次のように述べる。
  「本校の進路指導は、3年生までしっかりと部活を続けさせて、引退後は一気に受験へと全力を傾けさせる『追い込み型』のスタイルでした。しかし、ここ数年はこの伝統的なスタイルが通用しなくなってきていました。それにもかかわらず生徒や保護者は『3年生になってから頑張れば何とかなる』と考え、我々教師も『酒東の生徒は教師に言われなくても勉強する』という思い込みを捨てきれなかったんですね。こうした幻想が、ここ数年来の進学実績の低迷を招いていたのだと思います」
  このままではいけない――。学校内外からこのような声が上がるまで、それほど時間はかからなかった。進路部、教務部、生徒指導部から選ばれたメンバーによるプロジェクトチームが組織され、東は東京から西は長崎まで、全国の改革先進校のノウハウを収集。その情報を基に03年度3学期一杯で、04年度1学年の年間計画を練り上げた。「Do Practice~『習慣』と『実行』」を合言葉に、「新生・酒東」への脱皮を目指す取り組みが、こうして始まったのである。


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